フジタ製薬はコミュニケーション手段を刷新するためにIP電話システムを導入した。ソフトフォンを使い電子電話帳からワンクリック発信したり,プレゼンスを活用したりしてコミュニケーションの円滑化を図る。また,ボイス・メールを使い,外出中でも迅速に連絡が取れるという仕組みも用意している。

 動物用医薬品専業メーカーであるフジタ製薬は2006年7月,新社屋の竣工を機にフリーアドレス化を推進し,併せてコミュニケーション手段を刷新した(写真1)。そこで導入したのが米シスコシステムズのIP電話システムである。

写真1●IP電話システムを導入し,フリーアドレス環境も実現

 同社は1930年創業の老舗ながら,そのイメージとは裏腹にIT化を着々と進めていた。米IBMのグループウエア「Notes」を活用した社内システムを構築しており,モバイルからの利用も実現済み。社員の約4分の1に当たる20人の営業担当者が,常に全国の代理店を飛び回っているためだ。営業担当者と一部幹部には,データ通信カードとワンタイム・パスワードの生成カードを配布し,どこからでも社内システムに接続できる体制を整えている。

 一方,コミュニケーション手段の改善は遅れていた。使っていたボタン電話主装置は30年近く前のモデルで,内線電話の接続台数を増やすこともままならない。部署によっては別に外線を引いて対応していたため,内線を転送できないなどの不都合も生じていた。

プレゼンスの一部自動更新も実現

 この環境を一気に改革したのが今回のIP電話システムである。シスコの呼制御サーバー「Cisco Unified CallManager」(CM)とソフトフォンを含むIP電話機を導入。大半の社員はソフトフォンを利用する。ソフトフォンをメインにしたのは,社内システムとの連携を取りやすくするためだ。

 これらに加え,CMと連携する日本証券テクノロジーのCTI(computer telephony integration)ソフト「NSTechno-phone Manager」を導入し,Webブラウザ上の電話帳からのワンクリック発信などを可能にした(写真2)。

  写真2●シスコシステムズ製IP電話システムと組み合わせるWebアプリケーションを採用
日本証券テクノロジーの「NSTechno-phone Manager」を導入。PC上の電話帳から電話の発信ができるだけでなく,プレゼンスの取得や不在転送なども可能。
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 プレゼンスも活用する。CMから話中情報を取得したり,パソコンのスクリーン・セーバーの起動から離席を判断したりする仕組みを取り入れるなどして,プレゼンスの一部自動更新を実現。適切な連絡手段を選べるようにした。

写真3●IP電話システムの導入を推進した経営企画室の松山明システム担当部長(左)と同システム課の佐々木健治マネージャー(右)
 営業担当者にはダイヤルイン番号を割り当てたが,不在時を考慮してボイス・メールも併用する。ボイス・メールが入ると,自動的に営業担当者の携帯電話にメールを送信して通知。メールに記載した専用電話番号をクリックして発信することで,簡単にボイス・メールをチェックできるようにした。

 新システム導入に当たり,経営企画室の松山明システム担当部長は「目的は電話代をドラスティックに下げることではなく,コミュニケーションをいつでも取れるようにして生産性を上げること」と説明する(写真3)。情報リテラシーの高い同社にとって,コミュニケーション改善の効果はすぐに現れそうだ。