1990年代のバブル崩壊後,企業の収益が会社の規模によって決まる時代は終わり,収益を最大化させる源泉がブランドや技術・ノウハウなどの目に見えない資産(知的資産)に移行してきた。この結果,「企業価値」を高めるために「見えない資産」とどう向き合っていくかが,経営戦略に大きく関わってくる。
技術をベースに事業展開しているメーカーの場合,「技術」を「製品」化し,「市場」に供給していく。そのためには「研究開発」によって「技術」を創出し,「製造」することによって「製品」となり,「販売」して「市場」に送り出す,という関係がある。事業の3要素(技術,製品,市場)と企業組織の3要素(研究開発,製造,販売)に加え,研究開発によって創出され,製品や製造プロセスに組み込まれた技術・ノウハウが「目に見えない資産」であり,大量生産の時代から多品種少量生産の時代となったいま,知的資産はますます重要な経営資産となっている。
知的資産の中でも特許のような法的保護の対象となる知的財産への関心は急速に高まっている。2002年には国策としての「知的財産立国」を実現するための「知的財産戦略大綱」が発表。2003年には内閣府内に設置された知的財産戦略本部によって「知的財産推進計画」が制定され,それに基づいて知的財産の創造・保護・活用を強化するためのさまざまな施策が推進されている。「知的財産推進計画」は,2002~2005年までが第1期(知的財産戦略のスタート),2006~2008年までが第2期(世界最先端の知的財産立国を目指す)とされており,2006年度は第2期の初年度として重要な年になる。
知的資産を戦略的に経営へ取り入れることは,現在のコア技術への研究開発を集中させ,さらなる競争力の強化が可能となる。そして,将来の競争優位となり得る技術の育成,事業化を行う計画のない技術についての外部調達などを推進することができる。これからの企業に求められているのは,知的資産を効率的に活用したうえで事業・研究開発との統合を図り,その結果,市場から高い評価を受けることが真の「企業価値」といえるのではないだろうか。
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