去る10月20日,いよいよASP.NET AJAX(開発コード名は「Atlas」)のVer1.0 β1版がリリースとなりました。ダウンロード可能なパッケージは,以下の通りです(表1)。
表1:ASP.NET AJAXで提供されるパッケージ
パッケージ名概要
Microsoft ASP.NET AJAX v1.0 BetaASP.NET AJAX Ver1.0の完全パッケージ
Microsoft ASP.NET AJAX CTP BetaASP.NET AJAX Ver1.0には含まれなかった開発中の機能(将来的にコアモジュールに含まれる予定)
ASP.NET AJAX Control ToolkitASP.NET AJAXをベースに構築されたサーバーコントロール集
Sample ApplicationsASP.NET AJAXをベースとしたサンプルアプリケーション
Microsoft AJAX Library Beta ASP.NET AJAXのクライアントフレームワーク部分(ASP.NET以外の環境で利用する場合に使用)

 β1版のリリースに伴い,本連載でも以降ではβ1環境を前提に紹介を行っていく予定です。また,Atlas Frameworkの呼称も,第2回以降では「ASP.NET AJAX」で統一することにします。さて,それでは前置きはこのくらいにして,本題に行ってみましょう。

 今回からは,具体的なサンプルアプリケーションの実装を通じて,ASP.NET AJAXによる開発を体感してみることにしましょう。今回は開発の準備として,ASP.NET AJAXのインストールと環境設定の手順について紹介します。

 連載第1回でも紹介したように,ASP.NET AJAXはASP.NET 2.0上で動作するフレームワークです*1。本連載で紹介するサンプルを動作するにあたっては,あらかじめ「.NET Framework 2.0」「SQL Server 2005 Express Edition」をインストールしておく必要があります。これらソフトウエアは,個別にインストールしても(もちろん)構いませんが,統合開発環境であるVisual Studio 2005(無償で提供されているVisual Web Developer 2005 Express Editionでも可)をインストールすることで,まとめて導入することが可能です。Visual Studio 2005自体のインストール手順については,本稿では省略します。詳細には著者のサポートサイト「サーバサイド技術の学び舎 - WINGS」-「サーバサイド環境構築設定」などを参照してください。

ASP.NET AJAXのインストール&環境設定

 ASP.NET AJAXのセットアップ・ファイルは,「ASP.NET AJAX」サイトからダウンロードすることが可能です。冒頭述べたように,本連載では執筆時点での最新バージョンであるVer 1.0 β1版を使用します*2

 ダウンロードしたASPAJAXExtSetup.msiをダブルクリックするとインストーラが起動しますので,指示に従って次に進めてください。途中,何カ所かオプションの選択を求められる個所がありますが,デフォルトのままで問題ないでしょう。インストールが成功すると*3,「C:\Program Files\Microsoft ASP.NET\ASP.NET 2.0 AJAX Extensions\v<バージョン番号>」フォルダにASP.NET AJAXの動作に必要な一連のファイルが作成され,Visual Studio 2005のテンプレートにはASP.NET AJAX対応アプリケーションを作成するための「ASP.NET AJAX-Enabled Web Site」が追加されるはずです。

 ASP.NET AJAX対応のアプリケーションを作成するには,Visual Studio 2005のメニューバーから[ファイル]-[新規作成]-[Webサイト...]を選択してください。

図1:[新しいWebサイト]ダイアログ(クリックで拡大表示)

[新しいWebサイト]ダイアログ(図1)が表示されますので,テンプレート欄から「ASP.NET AJAX-Enabled Web Site」を選択し,サイトの保存場所を指定したうえで[OK]ボタンをクリックします。アプリケーションの骨格が自動作成され,ソリューション エクスプローラからは,図2のようにアプリケーション作成に必要なファイルが配置されているのが確認できるはずです*4

図2:「ASP.NET AJAX-Enabled Web Site」テンプレートによるデフォルトの構成

 一見,通常のASP.NETアプリケーションと同様のファイル構成にも見えますが,アプリケーション構成ファイル(Web.config)を確認すると,ASP.NET AJAXをアプリケーション上で利用するための構成要素が追加されていることが確認できるはずです。

 やや長いですが,以下に「ASP.NET AJAX-Enabled Web Site」テンプレートにおけるWeb.configのデフォルトの構成を示します(リスト1。ただし,見やすいように適宜改行を追加し,不要なコメントは省略しています)。

リスト1:Web.configのデフォルトの構成(こちらをクリックすると別ウィンドウで開きます

 すでに作成済みのWebサイトに対してASP.NET AJAXを組み込みたいという場合には,アプリケーション構成ファイルに対してリスト1の構成を追加してください。Web.configのスケルトンは,ASP.NET AJAXのインストールフォルダ(「C:\Program Files\Microsoft ASP.NET\ASP.NET 2.0 AJAX Extensions\v<バージョン番号>」)にコピーされています。

 以上で,ASP.NET AJAXをVisual Studio 2005で作成するための準備は完了です。利用する機能に応じて,「Microsoft ASP.NET AJAX CTP Beta」や「ASP.NET AJAX Control Toolkit」もインストールする必要がありますが,本稿ではまず最低限必要な「Microsoft ASP.NET AJAX v1.0 Beta」のみで説明していくことにします。ASP.NET AJAX Control Toolkitについては,本連載後半で改めて解説する予定です。

 次回からはいよいよASP.NET AJAXを使用して,簡単なAjax対応アプリケーションを構築してみることにします。

 本連載はASP.NET AJAX β1リリース(2006年10月20日時点)の情報を基に執筆しています。今後のβ2,Release Candidate版,正式版などでは仕様が変更される可能性がありますのでご注意ください。


*1 厳密にはクライアントサイド・フレームワーク(Microsoft AJAX Library)だけを切り出すことで,非ASP.NET環境(例えばPHPやサーバーサイドJavaなど)の環境でもASP.NET AJAXの機能を利用することが可能です。

*2 古いAtlas FrameworkのCTP(Community Technology Preview)版などがインストールされている場合には,β1版のインストールに先立ってアンインストールしておく必要があります。

*3 Microsoft ASP.NET AJAX CTP BetaやASP.NET AJAX Control Toolkitをインストールする場合には,必ずMicrosoft ASP.NET AJAX v1.0 Betaをあらかじめインストールしておく必要があります。

*4 Atlas Framework CTP July版までは「Microsoft.Web.Atlas.dll」がアプリケーションルート配下のBinフォルダに配置されていました。しかし,β1からはGAC(Global Assembly Cache)に登録されますので,個別のアプリケーションに配置する必要はありません(また,β1版ではファイル名も「Microsoft.Web.Extensions.dll」に変更になっています)。