10月6日から8日まで東京・有楽町交通会館で開催されたオーディオ関連ショー「ハイエンドショー・トウキョウ2006」では,目を引くスピーカが多く出展されていた。そこで今回も引き続き,そこに出展されていたスピーカを紹介する。

amm

 ammは,Luxでスピーカ開発を手がけた大村 孝則氏が創設した。これまではスピーカ・ユニットの四十七研究所やパストラルシンフォニーにOEM供給してきたが,2007年2月に自社ブランドのスピーカを発売する予定で,その試作機を出展した。フルレンジのユニットを使用しており,エンクロージャの大きさは四十七研究所のModel 4722と同じである。ユニットはこれまでのOEM製品とは別物の新規開発品である。小型ながら,良質な音質を披露していた。


図1●ammの試作機(手前)

GTサウンド

 同社はこれまで,高級ホーン型スピーカをソニーサウンドテックのユニットを使用して製造してきたが,2006年10月に自社開発のドライバ「GSU-D04」(1台50万4000円)を発売した。2005年10月に発売した自社開発の40cmウーファ「GSU-W16」(1台35万7000円),従来から販売している木製ホーンと組み合わせ,本格的なホーン・スピーカ・システムが構築できる。

 ホーン・スピーカの利点は楽器の定位のよさ,楽器から音が飛んでくる感じの再現性,ホールの遠近感の再現性のよさ,などがある。欠点としては,硬い音質,荒々しい音質などがあるが,GTサウンドのドライバとホーンはこの欠点を克服している。

 GSU-D04は,厚さ35μmのアルミ・ダイアフラムとボイス・コイルを一体成形し,振動系の大幅な軽量化を実現した。500Hzから24kHzまでほぼフラットな周波数特性を実現している。微小信号での優れた再現性も達成できた。ホーン・スロート径は49.2mm。出力音圧レベルは110dB/W/m,定格入力は25W,重量は18kg。

 ウーファ「GSU-W16」は,ボイス・コイルの両側にダンパーを配置するシンメントリ・ダブル・ダンパー構造を採用している。最大入力時の耐久力を向上させ,高リニアリティ再生を実現している。エッジに,熱や湿気に強い特殊なゴムを採用し,耐久性を高めている。周波数特性は28Hz~1kHz,出力音圧レベルは98dB/W/m,定格入力は200W(IEC 100Hz),最大入力500W,重量は19.4kg。


図2●GTサウンドのドライバ「GSU-D04」の内部


図3●GTサウンドの40cmウーファ「GSU-W16」の内部


図4●自社製ユニットを採用したGTサウンドのシステム「SRS-B」(樺合板,1台189万円)

ロッキーインターナショナル

 イギリスの老舗メーカーのQUADとWharfedaleのスピーカを輸入する同社は,QUADの創立70周年記念モデル「ESL 2905」を出展した。

 QUADは1936年にイギリスに設立されたオーディオ・メーカーで,静電型スピーカでその評価を確立した。素直でクリアーな音質はクラシック音楽愛好家に好まれている。ESL2905は,6枚のパネルを組み合わせた静電型平面スピーカ。従来製品では,低音が不足していたが,最新モデルで大幅に改善された。出力音圧レベルは86dB,周波数特性28Hz~21kHz,幅695mm×高さ1430mm×奥行き385mm,重量41.6kg。価格は1台84万円。2006年6月発売。2905より小型の「ESL 2805」もある。幅695mm×高さ1040mm×奥行き385mm,重量34.8kg。価格は1台63万円である。


図5●QUADの「ESL 2905」

ピー・エス・ディー

 ピー・エス・ディーは,日本製で世界に通用するハイエンド・スピーカを製造販売することを目的として2003年2月に設立された。2003年5月には最初の製品となる小型ハイエンド・スピーカ「PS2208B」を発売した(2台で48万6000円)。

 今回のショーでは,2006年11月に発売予定の3ウェイ5スピーカのバスレフ型スピーカ「T2」を出展した。価格は2台で100万円以上の予定。T2の音決めは,ソニーのS-Masterデジタル・アンプを搭載したサウンドデザイン社の「SD05」(52万5000円)で行っている。ウーファは26cm2台,中域は15cm,トゥイータは2.5cm。出力音圧レベルは93dB(2.83V/1m),周波数特性は24Hz~50kHz(±3dB),幅440mm×高さ1230mm×奥行き470mm,重量79kg。


図6●ピー・エス・ディーの「T2」

オンキョー

 オンキョーは,2ウェイのトールボーイ型スピーカ「D-908E」と,2ウェイ小型スピーカ「D-TK10」の仕上げ違いの試作機を出展した。

 これまでの振動板は中心部に別パーツのセンター・キャップを接着しているため,強度が不足して分割振動(スピーカを構成する各部がバラバラに振動。音のにごりや鋭さが鈍る要因)が課題となっていた。D-908Eのウーファは,新開発の16cmユニットで,PEN繊維,アラミド繊維,コットン,アラミド繊維---という4層構造を採用したA-OMFモノコックを搭載している。PEN繊維は綾織り構造にすることで,繊維間の樹脂をなくすことに成功した。振動板の剛性と内部ロスを飛躍的に向上させた。センター・キャップと振動板を一体成型,変曲点のない椀形状の一体ボディーにより剛性をさらに強めて分割振動の要因を徹底排除している。より硬く,軽く,固有音が少ないという振動板の究極の理想に近づけて正確なピストンモーション領域を拡大している。

 トゥイータは,外径40mm/内径30mmのリング型振動板を,同軸上に配した直径35mmのボイス・コイルで駆動する構造を採用している。振動板の外端と内端の中間点に当たる円周を駆動ポイントにすることで,振動板の分割振動を徹底的に抑制している。ピストンモーション領域が,ほぼ20kHzに達するクリアーな高域再生を実現している。また振動板内側に新設計の削り出しアルミ製イコライザを装着し,可聴帯域をはるかに越える超高域まで,よりフラットな周波数特性を獲得している。トールボーイ型は定在波が発生しやすいので,セッティングには注意が必要だ。

 定格周波数範囲は28Hz~100kHz,幅322mm×高さ1040mm×奥行き380mm,重量21.8kg。価格は1台14万7000円。2006年6月発売。


図7●オンキョーの「D-908E」

 アコースティック・ギターづくりの名門,高峰楽器製作所とのコラボレーションによる独創的なキャビネットを持つ「D-TK10」は,響きが良いことで評判であるが,参考出品として異なる木材を使ったD-TK10を出展した。メープルにサンバースト塗装を施したモデルは,2007夏頃発売予定だ。


図8●オンキョー「D-TK10」。左から標準のローズウッド,メープル・サンバースト(ペア),ハワイアン・コアの試作機。手前の白い物体は,ウーファのA-OMFモノコック・コーン

東志

 東志は,イギリスのMichell Engineering(ターン・テーブル)やGoldring(カートリッジ)などを輸入しているが,新たに取り扱いを開始する予定のQ Acoustics社の小型スピーカ「1020」,参考出品の米国Cerwin-Vega社製「VE-15」,国産のセリカクリエーションズ社の多孔質セラミックスの球形スピーカ「CC-GB25X」を出展した。

 Q Acoustics社の「1020」は,2ウェイのスピーカで,ウーファは12.5cm,トゥイータは2.5cm,感度は88dB。寸法は幅175mm×高さ250mm×奥行き265mm。価格は2本で5万4600円。年内発売を予定している。


図9●Q Acoustics社の「1020」

 Cerwin-Vega社の「VE-15」は,3ウェイのフロア・スタンディング・スピーカである。ウーファは38cm,中域は13.3cm,トゥイータは3.2cm。感度は95dB/W/m。最大入力は400W。周波数特性は26Hz~20kHz。寸法は幅422mm×高さ914mm×奥行き528mm。重量は36kg。発売は未定である。


図10●Cerwin-Vega社の「VE-15」

 セリカクリエーションズ社の「GB25X」は,10cmのフル・レンジ・ユニットを対角線上に2個配置した多孔質セラミックスの球形スピーカである。2台で21万8000円,2006年10月発売。セラミックスの特性で,音波が全方向に通過し,指向性を保ちながら,スピーカの背面音を球体の超多孔質セラミックスの無数の孔から全方向に放射拡散する。スピーカの直径は25cm。


図11●セリカクリエーションズ社の「GB25X」

オーディオレファレンスインク

 オーディオレファレンスインクは,イタリアの新鋭スピーカ・メーカーのEVENTUS Audio,デンマークのハイエンド・スピーカ・メーカーのPeak Consult International,イギリスのスピーカ・メーカーONIX Audio,イタリアのハイエンド・オーディオ・メーカーのAudia Flight,米国の真空管アンプ・メーカーのBAT(Balanced Audio Technology),イギリスのハイエンド・オーディオ・メーカーのChapter,米国のオーディオ・メーカーのChannel Islands Audio,同じくSonic Euphoria(パッシブ型プリアンプ)などを扱っている。

 今回のショーでは,ONIX(オニキス)の「Reference 1 MKII」「Reference 3」「EVENTUS AudioのPhobos Classic」などのスピーカを出展した。

 ONIX Reference 1 MKIIは,2ウェイ,2ユニットのブックシェルフ型のスピーカ。ウーファはATOHMの13.3cmのユニット,トゥイータはVIFAの2.5cmのユニットを使用している。出力音圧レベルは88dB/W/m,許容入力は100WRMS,周波数特性は42Hz~35kHz。寸法は幅200mm×高さ370mm×奥行き290mm。重量は10.5kg。価格は2台で24万1500円。2005年2月発売である。

 ONIX Reference 3は,4ウェイ,4ユニットのフロア型スピーカ。ウーファはATOHMの16.3cmのユニットを2本,トゥイータはVIFAの2.5cmのユニット,スーパートゥイータはマグネット・スタティック・リボン型を使用している。出力音圧レベルは90dB/W/m,許容入力は100WRMS,周波数特性は28Hz~50kHz。寸法は幅215mm×高さ1120mm×奥行き315mm。重量は45kg。価格は2台で89万2000円。2006年10月発売である。


図12●左からONIX Reference 1 MKII(別売りのスーパートゥイータ「ERT」が載っている),ONIX Reference 3,EVENTUS AudioのPhobos Classic

バック工芸社

 バック工芸社は,スピーカ・スタンド,オーディオ・ボード,ラックなどの販売や,スピーカの修理を手がけている。今回のショーでの新製品は小型,超小型スピーカ・システム用の汎用スピーカ・スタンド「BASIC-X」であった。

 BASICX-Xは米松を使用しており,防振,吸音作用を極力排除することにより,本来楽器の持つ美しい響きを阻害することがないように設計されている。パストラルシンフォニーの小型スピーカ「Cz302ES」を載せて出展していた。寸法は,幅220mm×高さ765mm×奥行き300mm。重量は4kg。価格は2台で8万4000円。2006年9月発売である。


図13●左からバック工芸社のBASIC-X,そしてBASIC-Xより1回り大きいBASIC-1。スタンドの下に見える白い板はコーリアンでできたスタンドに付属する板。その下は,左からオーディオ・ボードBASIC-STAGE 1,BASIC-STAGE 100。スピーカは左がパストラルシンフォニーのCz302ES,右がTANNOY Autograph mini