CiscoルータにおけるEIGRPの基本設定は,CCNPだけでなくCCNAでも出題されます。今回はEIGRPの設定の基本と,WANリンクでのEIGRPの設定を学びましょう。
EIGRPの設定
EIGRPをCiscoルータで設定するには,router eigrpコマンドを使用します。
- (config)# router eigrp [AS番号] ・・・ EIGRPを動作させ,設定モードに入る
- [AS番号]
- EIGRPを使うASの番号
- [AS番号]
AS番号はネットワーク内のすべてのEIGRPルータで同一の値を使用していなければなりません。
次は,networkコマンドでEIGRPの対象となるネットワークを指定します。
- (config-router)# network [ネットワークアドレス] {ワイルドカードマスク}
- [ネットワークアドレス]
- ルーティングプロトコルを有効にするネットワークのネットワークアドレス
- {ワイルドカードマスク}
- アドレスのワイルドカードマスク。省略可能
- [ネットワークアドレス]
ワイルドカードマスクを使う場合,指定されたクラスレスネットワークが対象となります。ワイルドカードマスクを省略した場合は,ネットワークはクラスフルネットワークとして扱われます。基本的なコマンドは,以上の二つになります(図1)。
図1 EIGRPの基本設定
シリアルインタフェースを使用している場合,経路選択を効率的にするために,インタフェースの帯域幅を設定する必要があります。PPPやHDLCならば回線速度,フレームリレーならばCIRを設定します。インタフェース設定モードで帯域幅を設定します。
- (config-if)# bandwidth [帯域幅]
- [帯域幅]
- 単位はkbpsで設定。デフォルトはT1(1554kbps)
- [帯域幅]
EIGRPで使う各種パラメータを調整する
デフォルトの設定ではなく,EIGRPのパラメータを変更することにより,EIGRPの動作を調整できるいくつかのコマンドが存在します。例えば,EIGRPにおけるメトリック値である「K値」を変更するコマンドは次の通りです。
- (config-router)# metric weights [TOS] [K1 K2 K3 K4 K5]
- [TOS]
- デフォルトはゼロ。基本的に変更しない値
- [K1 K2 K3 K4 K5]
- K値。デフォルトはK1=K3=1,K2=K4=K5=0
- [TOS]
EIGRPでネイバーになるための条件として,ネイバー間でK値が一致してないといけません。なので,K値を変更をする場合は注意が必要です。
EIGRPのHello間隔やホールドタイムも変更可能です。EIGRPのHello間隔はEIGRP第1回で説明したように,インタフェースの帯域幅で決定されています。この値を変更するには,インタフェース設定コマンドで次のコマンドを使用します。
- (config-if)# ip hello-interval eigrp [AS番号] [間隔]
- [AS番号]
- ここで指定したAS番号のEIGRPのHello間隔を変更する
- [間隔]
- 単位は秒
- [AS番号]
- (config-if)# ip hold-timel eigrp [AS番号] [ホールドタイム]
- [AS番号]
- ここで指定したAS番号のEIGRPのホールドタイムを変更する
- [ホールドタイム]
- 単位は秒
- [AS番号]
また,EIGRPは通常,物理インタフェースに設定された帯域幅の最大50%までをEIGRPパケットのやりとりに使うことができます。つまり,EIGRPのHello,Update,Query,Reply,Ackのパケットが最大で使用できる帯域は,帯域幅の半分までということです。場合によってはこの設定では多すぎたり少なすぎる時がありますので,設定で変更することができます。
例えば,PPPoEを使用している場合や,広域イーサネットを使用している場合を考えてみましょう。ルーターの物理インタフェースはFastEthernet(100Mbps)ですが,実際の回線速度は最大10Mbpsといった場合などに,設定変更が必要になります(図2)。
図2 EIGRPパケットの回線の占有
そのため,ip bandwidth-percent eigrpコマンドを使用して,EIGRPパケットの占める割合を変更できます。
- (config-if)# ip bandwidth-percent eigrp [AS番号] [パーセント]
- [AS番号]
- EIGRPパケットを制御するASのAS番号
- [パーセント]
- EIGRPパケットが最大で占めることができる割合。100%を越えてもかまわない
- [AS番号]
図2のような例の場合,100Mbpsの物理インタフェースの回線速度に対し,アクセス回線速度が10Mbpsしかないので,その50%をEIGRPで使用するとなると5Mbpsになります。コマンドでは100Mbpsの5Mbpsですので,5%,つまり,ルーターが所属するAS番号が1だとしたら「ip bandwidth-percent eigrp 1 5」と設定することになります。
WANリンクでのEIGRP
WANリンク,例えばマルチポイントフレームリレーでEIGRPを使う場合,「EIGRPトラフィックはVC(Virtual Circuit)のCIRを超えないようにする」,「EIGRPの総トラフィックがインタフェースの回線速度を超えないようにする」というルールがあります。そのため基本は,設定した帯域幅を等分して使用します。つまり,物理インタフェースのbandwidthコマンドで設定した帯域幅をマルチポイントの対向ルータの数で割った値が,それぞれの対向ルーターのCIRになるわけです(図3)。これらのルールに従えば,EIGRPはWAN上で問題なく動作します。
図3 マルチポイントフレームリレーでのEIGRP
CIRの値が異なる場合,マルチポイントのケースでは最小のCIRを基準に設定します。また,ポイントツーポイントとマルチポイントを混合する「ハイブリッド設定」をすることもできます(図4)。
図4 マルチポイントフレームリレーでのEIGRP(ハイブリッド設定)