システム管理の生産性は,適切なツールを用いることによって爆発的に向上する。特に,作業時間の短縮と,作業中に得られるデータの幅広さや正確性の改善が図れるのだ。管理の生産性の向上が顧客満足度向上につながるのは言うまでもない。筆者はそんな生産性向上を実現する8つのツールを,いつもUSBメモリーに入れて持ち歩いている。このツールが最高なのは,すべて完全に無償だということだ。

コミュニケーションに使用するユーティリティ

FileZilla

 Webホスティング業界で働いていたとき,サーバー間で多量のディレクトリとファイルを移動させなければならないことが頻繁にあった。私のある顧客は,Webサイト上で最新版コードを配布していたため,顧客も私と同様の作業をする必要があった。顧客に電話でコマンド・ラインFTPセッションの手順を説明するのは,私にとって楽しいと作業ではなかった。だがFTPのことをあまりよく知らない人もたくさんいたので,時にはこの作業が必要になることもあったのだ。

 GUIのFTPクライアントも販売されていたが,ずっと前から存在しているプロトコルのGUIに10~30ドルといったライセンス料を払わなければいけないことを考えると,私はいつも不快な気分になっていた。そこで私はある日,別のソリューションを探し始めた。そのソリューションはグラフィカルで無償,そして少なくともFTP経由で2つのロケーション間のファイルとディレクトリの簡単なバルク・コピーを行う機能を備えたものである必要があった。これらの条件を満たし,さらに多くの機能を備えているツールが1つあった。「FileZilla,日本語版あり」と呼ばれるオープン・ソース・クライアントだ。

 FileZillaはGUIのFTPクライアントで,Windows 95からWindows XPまで,すべての32ビット版Windowsで動作する(図1)。FileZillaは,FTPとSFTP(SSH FTP)転送,ドラッグ&ドロップ転送,複数ファイルと複数接続の転送のキュー処理,PASV(パッシブ)モードに対応している。簡単に言うと,FileZillaは多くの商用製品が提供しているすべての機能を,無償で提供しているのだ。すべての管理者のツールボックスになくてはならないユーティリティである。

図1●GUIのFTPクライアントであるFileZilla
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 さらに,シンプルで速いFTPサーバーが必要だが,IIS(Internet Information Services)をインストールする気はないというときのために,FileZillaにはボーナスとしてサーバー版も用意されているのだ。Windows XP Home Editionを使っていて,IISをインストールできないというユーザーもいると思うが,そういうときにも使えるだろう。

OpenSSH

 10年ほど前,フィンランド人エンジニアのTatu Ylonen氏が,Secure Shell(SSH)として知られるプロトコルの最初のバージョンを設計した。この初期バージョン(現在では,一般的にSSH-1と呼ばれている)を使うと,インターネットのような信頼できないネットワーク上にあるUNIXで,安全で暗号化された「シェル」セッション(コマンド・プロンプトのようなもの)を生成できた。現在SSHは,UNIXの世界におけるリモート管理の事実上の標準になっている。そして今SSHは,「OpenSSH日本語サイト」によって,Windowsでも利用できるようになったのだ。

 Microsoftは既にすべての最新版WindowsにTelnetサーバーとクライアントを付属している。そのため,SSHを必要ないと思っているユーザーもいるかもしれない。だがセキュリティ上の理由から必要なのだ。MicrosoftのTelnetコンポーネントを使って,インターネット上で,リモートからコマンド・プロンプト・セッションを生成できはする。だがこのコミュニケーション・セッションは平文で行われるのだ。従って,好奇心が強く,簡単に入手できるパケット・スニフィング・ソフトウエア(例えば後で取り上げる「Ethereal」)を持っている人なら,Telnetセッションで行われていることのすべてを簡単に察知できるのである。

 SSHの目的は,機能を落とすことなく,Telnetのような安全でないプロトコルに取って代わることだ。管理者は通常,Windowsで安全でない接続を使ってコマンド・プロンプト・セッションを生成するとき,SSHを用いる。だが管理者は,安全にファイルを転送するためだけでなく,TCPポートを安全なトンネルの中に入れてSSHチャンネル上で送信する際にも,一般的にSSHを使用する。

 私はSSHのことを,自分の顧客にとって便利なリモート管理プロトコルだと思っている。セルラー・データ(例えば,GPRS(General Packet Radio Service))などの低帯域無線通信接続を使って作業しているときに,よくクライアントのシステムにリモートで接続する必要が生じる。そういうときSSHを使うと,リモート・システム上でコマンド・プロンプト・セッションを確立し,接続の安全性に疑問を感じることなく素早く作業して問題を解決できる(図2)。高速通信を利用できるときは,ターミナル・サービスのようなグラフィカルなプロトコルもいいだろう。だが帯域幅が限られているとき,SSHは最高の代用品だ。

図2●OpenSSHサーバーにOpenSSHクライアントで接続したところ
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 ボーナスとして,PocketPCとPalm OSといったハンドヘルド・デバイス向けの,優れたSSHクライアントが用意されている。これで軽量のフォームファクタでも,多くの安全なリモート管理機能が可能になるだろう。