パレットのレンタル事業を手がける「日本パレットレンタル」(本社:東京都中央区、社長:坂井健二氏)は2006年度中に、UHF帯対応無線IC タグを利用したSCM(サプライチェーン管理)システムを稼働させる。EPC グローバルが作成した最新規格「EPCクラス1 ジェネレーション2」(Gen 2)に準拠したIC タグを使い、IC タグ経由で収集したデータの管理システムを「EPC グローバルネットワーク」に対応させるのが特徴である。メーカーから卸事業者、小売事業者までのサプライチェーン全体にわたる物流業務の効率化を目指す。

 日本パレットレンタルは、ICタグを張り付けたパレットを物流効率化のキーデバイスと位置付けている。今回のシステムでは、同社が所有するパレット(プラスチック製の11型パレット、所有量:200万枚)やパレットに積載する荷物などにUHF帯ICタグを張り付け、パレット自体を個品管理するとともに、パレットに積載した荷物の流れをリアルタイムで管理する。パレット自体を個品管理することで、パレットの紛失や滞留を可能な限り減らし、回収効率の向上を目指す。

 荷物のリアルタイム管理では、パレットと荷物に取り付けたICタグのデータをひも付けて、物流センターや小売店における入出荷検品、ピッキング検品の効率化や精度の向上などを目指している。

6月にネットワークをEPC対応に

 日本パレットレンタルは、今回のシステムを段階的に導入する計画である。まず2006 年6月に、現在ASPサービスの形で提供しているWebベースの物流機器管理システム「epal」を、EPC グローバルネットワークに対応させる予定だ。これによりサプライチェーンにかかわるすべての関係者が、IC タグ経由で収集したデータを共有できるようにする。そのうえで2006年度中に、UHF帯ICタグを取り付けたパレットのレンタルサービスを開始する計画である。

 さらに2006年度末までには、UHF帯ICタグを張り付けたパレットの供給量を5万枚に増やし、パレットに積載した荷物をリアルタイムで管理するシステムの開発を完了させる。2008年度中にはUHF帯ICタグを張り付けたパレットの供給量を100万枚に増やし、荷物のリアルタイム管理サービスを開始する。最終的には2010年度までに、「わが社が所有するプラスチック製の11型パレットすべてに、UHF帯ICタグを取り付ける」(坂井社長)という青写真を描いている。

物流現場を再現した実験センターも開設

 こうしたシステムの採用を加速させるために日本パレットレンタルは約2億円を投じて、東京都江東区にある青海物流センターの1号棟内に実験センター(イノベーションセンター)を開設した(写真1)。UHF帯ICタグシステムの導入を検討しているメーカーや卸事業者などに対して、実際の物流現場を再現して実験を行うことができる環境を提供する。パレットや荷物に張り付けたICタグを一括で読み取る際に使うフォークリフト用ゲートや、ピッキング作業の際に使用する仕分け用ベルトコンベヤなどを導入している。

写真1 日本パレットレンタルが開設した実験センター
パレットとカートンに張り付けた
ICタグをフォークリフトに載せて一括で読んでいるところ。

  フォークリフト用ゲートや仕分け用ベルトコンベヤなどに搭載したICタグのリーダー/ライターは米シンボル・テクノロジズ製である。UHF帯ICタグは米インピンジのICチップを使用しており、マイティカードが供給した。ただし、ICタグについては1 社からの調達に限定しておらず、実験センターを利用するユーザーの要望に応じて、他社の製品も導入する考えである。



本記事は日経RFIDテクノロジ2006年6月号の記事を基に再編集したものです。コメントを掲載している方の所属や肩書きは掲載当時のものです。