米Microsoftが9月に発表したプレスリリースや,米Gartnerが出した「Magic Quadrant(魔法の四分円)」というレポートによれば,ビジネス・インテリジェンス(BI)市場におけるMicrosoftの成長が著しいという。特にGartnerのレポートは,あなたが「単なるデータベース管理者」であっても,いくつかの理由から知っておくべき価値があるだろう。

 Gartnerが発表した「Magic Quadrant for Data Warehouse Database Management Systems, 2006(データ・ウエアハウスとデータ・マネジメント・システムにおける魔法の四分円)」というレポート(米国時間9月12日発表)によると,2005年にMicrosoftのBIプラットフォームの売り上げが,前年比35.9%増加したそうである。またMicrosoftの最近の売り上げに関するプレスリリースによると,MicrosoftのSQL Server全体の売り上げは,2006会計年度の第四四半期に前年比35%増加している。Microsoftが発表したBIの成長に関するプレスリリースの中で,Microsoft Business Divisionの社長であるJeff Raikes氏は次のように述べている。

 「われわれが現在行っているBI投資によって,人々が重要なビジネス情報と接する方法が変わってきている。われわれは,今後も継続してソリューションを発展させていく。つい先日,統合されたパフォーマンス管理アプリケーションを完成させたところだ。われわれの製品は,顧客に完全かつ柔軟で,費用効率の高いBIソリューションを提供するだろう。BIを企業の至る所に本当の意味で浸透させるBIソリューションだ」(Jeff Raikes氏)

 Gartnerの「Magic Quadrant」モデルとは,ベンダーを4つに分類する手法のことである。「ニッチ市場のプレーヤ(niche player)」「挑戦者(challenger)」「ビジョナリー(visionary)」「リーダー(leader)」の4つだ。Garnerはベンダーをこれら4つの項目に分類する際,ベンダーの持つビジョンの完成度とビジョンを実行に移す能力を基準にしている。Gartnerが最近出した「Magic Quadrant」レポートによると,Microsoftはデータ・ウエアハウス分野で全面的に大きな進歩を遂げ,現在は挑戦者とリーダーの中間に位置しているという。レポートには次のように書かれている。

 「つい最近までMicrosoft SQL Serverは,部門規模のアプリケーションだと見なされていた。しかし,MicrosoftのDBMS(データベース管理システム)ソリューションを提供する能力に疑問を呈する者は,もういなくなった。レポート作成機能(Reporting Service)や分析サービス(Analysis Service)を追加したり統合したり,Office 2007で連携機能を強化したことによって,Microsoftは企業のDW(データ・ウエアハウス)ワークロードに対応できる製品を持つことになった。Microsoftが現在,挑戦者とリーダーの中間という格付けをされているのは,DWソリューションを提供する能力を証明する必要があるからだ。向こう数年間のうちにリーダーになるためには,Microsoftが混在ワークロードDWのリーダーにふさわしいスケーラビリティとパフォーマンスを持っていると証明する必要がある」

 Gartnerはレポートを無料で一般に公開してはいないが,「Magic Quadrant for Data Warehouse Database Management Systems, 2006」レポートは,価値のある読み物だ。GartnerのWebサイトによると,495ドルを払えばこのレポートを購入できるようだ。

 Googleの魔力に頼るという手もある。私は,このレポートで取り上げられているベンダーの1つである米NCRが特別に無料で公開しているレポートへのリンクを,Googleを使って偶然発見した。このレポートは特別長いわけでもなく,非常に読みやすい。そして,Microsoftとこの分野における他の競争相手に関するとても興味深い情報が含まれている(訳注:データ・ウエアハウスにおけるリーダーに選ばれたのは米NCAの「Teradata」と米IBM,米Oracleであり,リーダーと挑戦者の境界に位置するのがMicrosoft,挑戦者はIBMの「Sybase」で,ビジョナリーは米Netezzaと米DATAllegro,ニッチ・プレーヤは英Kognitio,「MySQL」,米SAND Technologyとなっている)。

 さて,BIに関心のない「単なるデータベース管理者」が,このレポートに注目しなければならないのはなぜだろうか。筆者は,データ・ウエアハウスとBI分野に関してある程度の能力がないと,データベース管理者になれない時代が来る可能性が高いと見ている。筆者はこれまでも何度かこの予測を紹介してきたが,今後も何度となくこの予測を紹介していくつもりだ。

 Jeff Raikes氏は「人々が重要なビジネス情報と接する方法が変容している」と「BIを企業の至る所に本当の意味で浸透させる」と語っている。そして,Gartnerのレポートでは,業界内で人気が高まっている新しい「第4」のデータ・ウエアハウスの用途を定義している。この用途とは,OLTPアプリケーションにおいて,より高いレベルの分析性とBI指向の機能が提供されることだという。

 BIが至る所に浸透したり,OLTPアプリケーションにBI機能が組み込まれたりすることによって,BIをめぐる境界線はあいまいになる。近い将来,企業全体や部門規模のデータベースにおいて,BIがどこから始まってどこで終わるのかを見極めるのが,困難になるだろう。これが意味しているのは,近い将来,すべてのデータベース管理者が,BIに関して今よりも知識を深める必要が迫っているということである。