三浦 雅孝 アイ・ピー・ビジョン
CTO
三浦 雅孝

SIPによるインターネット電話サービスが普及する上で、既存の電話番号体系でそのままSIP網に接続できれば便利である。ENUMはまさにこのサービスの実現に向けて始動した。しかし、技術面での検証はほぼ完了したものの、なかなか本格サービスの可能性が見えてこない。ところが最近、ENUMと同等以上のサービスを提供するボランティア団体が現れた。ENUM実現が一気に加速する可能性が出てきた。

 標準のSIP(Session Initiation Protocol)を使ったインターネット電話サービスが広まりつつある。第4回などで紹介したように、数字だけの“電話番号”でインターネット電話にかけられるサービスはある。しかし、既存の電話番号体系でそのままSIP網に接続できたほうが便利。ENUMは、まさにこれを実現する技術である。

 しかし、ENUMの本格サービスは見えていない。技術面での検証はほぼ完了しているものの、ビジネス面などの現実が実用化への道を閉ざしているように見える。そんな停滞状況に風穴を開けるボランティア団体が登場した。ENUMとほぼ同じ、むしろそれ以上のサービスの提供を開始したのである。

電話番号をSIPアドレスにマッピング

 ENUMとは、既存の電話網に付与された電話番号と、インターネット電話アドレス(SIPアドレス)をマッピングするためのプロトコルである(図1)。既存の電話番号をもとに、ENUM対応のDNS(Domain Name System)サーバーからSIPアドレスを取得する。

図1●ENUMの仕組み
DNSと同じような仕組みで,相手のSIPアドレスなどを調べる。

 たとえば「03-1234-5678」という電話番号から、SIPアドレスを検索する場合をみてみる。この電話番号をE.164勧告に従って国際公衆電気通信番号(以下、国際電話番号)81312345678に変換し、順序を逆にしてドメイン名の形にする。この例では、8.7.6.5.4.3.2.1.3.1.8.e164.arpaがそのドメイン名となる。このドメイン名でDNSサーバーを検索すると、NAPTR(ナプターと発音する)と呼ばれるレコードから、SIPアドレスを取得できる。実際に取得するのは「!^.*$!sip:usr@example.co.jp!」と記述されたデータである。これで電話番号「03-1234-5678」のSIPアドレスは「sip:user@example.co.jp」であることが検索される。

 ここで検索できるのは、SIPアドレスだけではない。電子会議などでよく使われるH.323アドレスや、電子メール・アドレス(mailto:)、インスタント・メッセージアドレス(im:)なども検索できる。もちろん固定電話番号からその人の携帯電話番号を検索することも可能だ。最新の勧告ではvCardデータ(住所、氏名などの情報、OutLookなどの多くのアプリケーションがサポートしている)を参照することも可能になっている。ENUMに登録された1つの電話番号から、その所有者へのさまざまなコンタクト情報をすべて検索できるわけである。