
【ソニー】280億円かけて1つの“企業”に
量販店も見えて在庫3割削減へ(後編)
役割と責任を明確に
クローバー導入により、製造も販売も市場を意識する体制に変わった。製造計画や需要予測といった製造や販売に関する情報に加え、量販店の情報がクローバー上で見られるようになった。SMOJは在庫切れの商品であってもEMCSが立てた製造計画からも引き当てられる。各社が持っているすべての情報をソニーグループで共有し、顧客が望む商品を必要な量だけ製造できる体制になったのだ。「仮想的に1つの企業になった」とEMCS経営管理部門の浦田尚吾企画管理部統括部長はクローバーの特徴を例える。
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| ●CLOVER(クローバー)の稼働により、製造が考えられる体制に |
それまでは量販店からの発注に対して、納期回答ができなかった製品が100種類を超えていたが、ほとんどなくなった。「残っているのはデジタルカメラの牛革ケースといったアクセサリー商品が中心で、1けたにまで下がった」(嶋田部長)という。
システムの効果を最大限にするために体制を大きく変えて、各社の役割と責任を明確にした。製造量の決定など製造における権限をEMCSに集中させるために、ソニーで抱える在庫をEMCSに一元化した。加えて、計画を立てるうえで判断材料となる情報が見られる。その1つが、量販店の在庫情報だ。流通在庫も含めて総在庫が分かる。EMCSは、これらの情報から今後市場が必要とする量をはじき出す。
例えば、今後注文が増えると判断すれば、仕掛り品を量販店の発注数よりも多く作っておいて戦略的に備える。「デジタル製品が世界で一斉に下降傾向になることは考えられない」(嶋田統括部長)ため、仮に予測が外れても仕掛品でとどめておけば米国など仕向け先を変えればよい。冒頭に紹介した年末商戦はこの機能が生きたのだ。
SMOJは需要予測の精度を向上させるために、情報収集や販売を支援する体制を強化した。需要予測の精度を向上させるうえで重要になるのは、今後の推移をどう見抜くかである。「A社の機種が来週価格を下げてくる」といった競合他社の状況や販売員の印象、売り場面積の大きさなど売れ行きを左右する情報を収集している。これらの情報を勘案して、上ぶれした場合と下ぶれした場合などいくつかのシナリオをEMCSへ提供する。
“非公式”会議で議論深める
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| クローバーの効果を語るSMOJのビジネスプラットフォーム企画部の嶋田健秀統括部長(左)とEMCSの浦田尚吾企画管理部統括部長(右) |
EMCSが製造量を決定する際には、SMOJがなぜこの仮説を導き出したのか理解する必要がある。EM CSとSMOJは今後の推移を議論する場を毎週設けている。SMOJは量販店から集めた注文数を基に今後12週間分の需要予測の情報をEM CSに提示。EMCSは提示された予測情報を参考にしながら、製造計画を立案する。そのうち、取引先の部品メーカーに対して8週分の情報を提供する。これを毎週繰り返す。
だが、需要のぶれが激しいデジタル製品では、週1回の公式な場だけでは足りない。東京・品川にあるS MOJの需要予測を担当するチームには、製造事業所の担当者が出張して作業できるスペースがある。なぜ変わったのか説明を受けたり、今後の推移について議論を重ねている。説明を聞いたEMCSの担当者はその場でシステムにアクセスして製造計画を変更することもある。
EMCSの担当者が需要予測に加え、参考にしているのが量販店の状況だ。量販店に在庫がたまっているのに作り続けたら不良在庫の山となりかねない。量販店32社からEDI(電子データ交換)を通じて発注とともに在庫情報やセルスルーデータと呼ぶ量販店における実売情報を得るようにした。
生産革新が下支え
完成した製品を早く届けられるように物流体制も見直した。工場から量販店へ直送する体制に切り替えたのだ。量販店からSMOJが注文を受けると、EMCSが供給可能かどうか数時間後にクローバー上で回答している。同時に、クローバーを介して数量と時期をSSCSに送信して配送計画を立てる。各事業所で製造した製品を方面別にまとめて仕分けするクロスドック方式を採用することで輸送頻度を向上させている。これまでは各事業所で出来上がった製品は物流センターに集められて、出荷指示があってから配送していたため時間がかかっていた。
これらクローバーによる改革は、セル生産やJIT(ジャスト・イン・タイム)などこれまでのソニーの生産革新が生きている。
セル生産の体制があるからこそ、需要の変動にも柔軟に対応できる。売れ行きによって、セルの台数を増減させるだけで対応できるからだ。セル生産の屋台には、いま組み立てている製品がどこに納品するものなのかが分かる。製造現場も顧客を意識できる工夫をしている。グループ全体が市場の動向に目を向けられる体制となったことで、さらなる在庫削減を目指す。
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| ●ソニーにおけるSCM改革のポイント |
(記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)







