(イラスト・アニメーション:岸本ムサシ)
今回の回答者: 工藤 隆久 ニフティ 基本サービス部 課長 |
メーラーの送信ボタンを押してから,「しまった!」と思うことはたまにありますよね。でも,残念ながら一度出したメールは取り消せません。
「送ってしまったメールを止められないのか」という質問は,インターネット・メールを始めた当初,パソコン通信の「ニフティ・サーブ」から移行したユーザーによく聞かれました。というのも,ニフティ・サーブでは相手がメールを開封する前なら,送信者がメールを消せたんです。これは,当時のニフティのメールがニフティに閉じたサービスで,ニフティ側でメールを完全に把握できていたからです。
しかし,プロバイダをまたがるインターネット・メールではこうはいきません。なぜなら,送り出されたメールは,送信者側のメール・サーバー経由ですぐに受信者側のサーバーに転送されるからです。両者のプロバイダが異なると,送信者側のプロバイダに「メールを消してほしい」と言っても,メールは残っていないので消せません。受信者側のプロバイダにお願いしても,自社のユーザーでないので対応してもらえません。
それなら,同じプロバイダのユーザー間のメールなら消せるのではと思う人がいると思いますが,それもできません。メールを送るにはSMTP(エスエムティーピー)という標準のプロトコルを使います。このSMTPは送信者とあて先をサーバーに伝えてメールを送る要求をするだけ。いったん送ったメールを追いかけて消す要求は出せないのです。
また,SMTPにはメールの送信者を証明する機能もないので,消してほしいと言っている人が本当にメールを出した本人なのか確認できません。ですから,プロバイダが問い合わせを受けて手動でメールを消すのも難しいのです。一度出したらあきらめるしかないですね。