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 携帯電話の番号ポータビリティ(MNP)の開始まで,残すところ3日となった。この日をターゲットに,携帯電話各社は秋冬モデルを大量に用意してきた。しかしMNPの開始までには2年以上の準備期間があり,その間に既に競争は始まっていたとも言える。

 MNPの検討が始まったのは今から3年前。総務省が2003年11月に「携帯電話の番号ポータビリティの在り方に関する研究会」を開始したことがきっかけだ。2004年2月の第5回会合でMNPの導入が正式に決まった。海外ではシンガポールを皮切りに既に多くの国でMNPが導入されていたこともあり,利用者の利便性向上や事業者間の競争促進の面から日本でも2006年度の早い時期にMNPを開始することが適当と報告された。

 携帯電話事業者はMNPを実現するために,事業者間で電話番号を移行できる仕組みを整備しなければならない。このシステムの構築には多額の投資が必要だったと言われている。当時の試算によれば,仮に全ユーザーの1割が利用した場合で約1000億円もの設備投資がかかるとされた。これに基づき,数千円程度の手数料を利用者から徴収する方針が固まった。

 一方,携帯電話のメール・アドレスをポータビリティの対象としない方針もこの会合で決まった。「システム開発が難しく,電話番号ほどニーズが見込めない」ことが理由として挙げられている。この点が現行制度の大きなネックになろうとは,当時は想像だにしなかったことがうかがえる。

 2004年5月には,MNPの導入時期や利用手続きなどについてのガイドラインも提示した。ここから2006年度のMNP開始に向けた具体的な準備が始まった。

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 ユーザーの期待もふくらみ始めた。2005年2月に,日経BPコンサルティングが実施した一般消費者向けアンケート調査では,実に57%が「MNPを利用したい」と答えている(有効回答数は793件)。

 もっともこの時期は手数料がまだ決まっていなかった。そこでこの調査では手数料を(1)1000円以下,(2)1001円~3000円,(3)3001円~5000円,(4)5001円~8000円,(5)手数料にかかわらず利用したい,に分けて聞いている。その結果(2)と(3)が多く,合計した「3000円以下なら利用したい」が約半数を占めた。

 「3000円以上」あるいは「手数料にかかわらず」利用したいと答えたのは約5%にとどまった。ここでいう「手数料」は利用者が実際に支払う額に相当するものと考えられるので,現行の約5000円に「高い」と感じてMNPの利用をためらうユーザーがかなりいることが推測される。

 この調査では乗り換え先の携帯電話事業者についても聞いている。最近の各種調査と同様,au(KDDI)が最も支持された。当時の分析では「着うた」や「データ通信の定額」といったサービスや対応端末の投入が評価されたとしている。やはりMNP時代の勝者は,魅力的なサービス/端末を提供できるかどうかで決まる。

 もっともMNPは一過性のものではなく,10月24日以降も永続的に続く制度。各事業者はこれからもサービス強化の手を抜くことはできないだろう。その意味で携帯電話事業者は,知力に加えて体力勝負の時代へと突入することになる。