VMware ESX Serverでは複数のゲストOSを稼働できる。そのため,ハードウエアに障害が発生し,VMware ESX Serverがダウンした場合,ビジネスに対する影響が非常に大きい。VMware ESX ServerやゲストOSの可用性,信頼性を高める必要がある。

 そのためには,高可用性,高信頼性をもつサーバー・マシンを選択することも考えられるが,ソフトウエア機能によって可用性を向上させることも可能である。例えば仮想マシンのクラスタリング,VMotion,VMware HA,VMware DRSといったVMware機能によるソリューションである。ここでは,このような仮想サーバー環境の高可用性を実現する機能について,概要と構成上の注意点について説明する。

仮想マシンのクラスタリング構成

 VMware ESX Server上で稼働する仮想マシン同士で,クラスタリングを構成することができる。ここではMicrosoft Cluster Service(MSCS)を利用した仮想マシンのクラスタリングを紹介する。

 仮想マシンのクラスタリングの構成パターンは,次の(1)~(3)の3つのパターンがある。

(1)1台の物理サーバー上で仮想マシン同士をクラスタリングする。
(2)2台の物理サーバーにまたがった仮想マシン同士をクラスタリングする。
(3)仮想マシンと物理サーバーをクラスタリングする。

 仮想マシンのクラスタリングを構成する際には,以下のような注意事項と制限事項がある。

 まずゲストOSについては,ゲストOSのOS領域を含む仮想ハードディスクを内蔵ストレージ上に格納する。共有ストレージ上に配置することはサポートされない。そして,データ領域用の仮想ハードディスクとクォーラム領域用の仮想ハードディスクが必要である。対応するWindowsは32ビット版のみで,2006年8月現在,64ビット版Windowsはサポートしない。

 仮想マシンのデバイスにも注意が必要である。仮想SCSIアダプタにはLSILogicを利用する。そして,仮想NICにはVMXNetを利用する。STORPortドライバーはサポートされない。SCSI miniportドライバーのみサポートされる。

 また,クラスタリングを構成する仮想マシンは,VMotion,VMware HA,VMware DRSの対象として利用することができない

 一方,VMware ESX Serverに関する注意事項は次の通りだ。1台のVMware ESX Server内で,QLogicとEmulexのカードを混在して利用できない。そして,VMware ESX ServerのSAN Boot構成や,NICのチーミングはサポートされない。また,VMware ESX Server 2.5x上の仮想マシンとVMware ESX Server 3.0上の仮想マシンをクラスタリングすることはできない。

 では,先に挙げたクラスタリング構成の3パターンについて概要や構成上の注意点を説明しよう。

1台の物理サーバーで構成

 図1は1台の物理サーバー上の仮想マシン同士をクラスタリングした例である。仮想マシンのOS領域は内蔵ストレージ上に構築しなければならない。データ領域は図1のように,SAN上に構築可能である。また,データ領域には,vmdkファイル(仮想ディスク)と,Raw Device Mapping機能(Virtualモード)のどちらも利用できる。

図1●1台の物理サーバー上で仮想マシン同士をクラスタリングした構成
図1●1台の物理サーバー上で仮想マシン同士をクラスタリングした構成

 MSCSのインストールと構成の流れは,次の(1)~(6)の通りである。仮想マシンをクラスタリングする場合も,一般的なMSCSを構成するのと同様である。

(1)1台目の仮想マシン(ノード1)を作成する。仮想マシンは仮想NICを2枚備える必要がある。

(2)ノード1にWindows Server 2003をインストールする。

(3)OSのインストール終了後,ノード1をシャットダウンし,ノード2としてノード1のクローンを作成する。

(4)ノード1に対して仮想ハードディスクを追加する。SCSIコントローラはLSILogicを利用し,SCSI Bus SharingではVirtualを指定する必要がある。仮想ハードディスクは,vmdkファイルとRaw Device Mapping機能(Virtualモード)のどらでもよい。

(5)ノード2に対して,(4)で作成した仮想ハードディスクを追加する。

(6)MSCSをインストールし,構成する。