AMD製プロセッサは,アーキテクチャの上でも仮想化システムを支える様々な独自の機能を備えている。ここでは,ダイレクト・コネクト・アーキテクチャ,デュアル・コア,AMD64,PowerNow!テクノロジといった,仮想化システムの処理性能向上や消費電力の削減に貢献するAMD独自の機能について解説する。

大容量高速メモリー・アクセスにも対応

 AMD製プロセッサは,プロセッサ・ダイ(半導体本体)にメモリー・コントローラを統合し,プロセッサとメモリーを直結する「ダイレクト・コネクト・アーキテクチャ」と呼ぶ技術を採用している(図1)。そしてプロセッサとI/Oの間は,HyperTransportテクノロジ・リンクで接続する。HyperTransportテクノロジはAMDが開発した技術で,現在はHyperTransportコンソーシアムに譲渡されている。

図1●AMD製プロセッサの基本アーキテクチャ
図1●AMD製プロセッサの基本アーキテクチャ

 HyperTransportは,バスの調停(通信開始前にバスの占有権を獲得する処理)が不要で双方向通信が可能な,チップとチップを繋ぐ技術。現在は,8Gバイト/秒の転送能力を持つ。ダイレクト・コネクト・アーキテクチャは,プロセッサとメモリー,プロセッサとI/Oの通信経路を完全に独立させることによって,通信ボトルネックがなく,遅延を低く抑える構成となっている。

図2●HyperTransportテクノロジ・リンクを3本備えるOpteron
図2●HyperTransportテクノロジ・リンクを3本備えるOpteron

 サーバー用プロセッサであるOpteronは,HyperTransportテクノロジ・リンクを3本備える(図2)。HyperTransportリンクを介して,I/Oだけでなくプロセッサ相互も自由に接続でき,最大8プロセッサ構成が可能である。一方,デスクトップ用プロセッサのAthlon64とモバイル用のTurion64は,HyperTransportテクノロジ・リンクを1本備え,これはI/Oの接続に使われる。

 仮想化システムは,1つのプロセッサ上で複数のOSを同時に動作させ,システムの使用率を向上させることが主目的の1つである。複数のOSが多重動作するので,メモリー・アクセスやI/Oアクセスの頻度は増大する。AMDのダイレクト・コネクト・アーキテクチャは,メモリー・アクセスやI/Oアクセスの遅延が低く,またボトルネックを生じない構成であることから,仮想化システムでの利用にも余裕を持って対応できる。

 また,各プロセッサにメモリー・コントローラが統合されているため,プロセッサ数に比例して実装メモリー容量を増やせる。仮想化システムの大容量メモリーへの要求にも容易に対応できる。

32ビットと64ビットの混在を可能にするAMD64

 現在x86アーキテクチャは64ビットに対応し,「x64アーキテクチャ」と呼ばれる。x64は,AMDがいち早く64ビット・コンピューティングの重要性を提唱し,推進して来た「AMD64アーキテクチャ」に基づく。AMD64の特長は,32ビットと64ビットのソフトウエアが共存して動作する点にある。その結果,仮想環境上で32ビットのゲストOSと64ビットのゲストOSの混在稼働を可能としている。