VMware Infrastructure 3には,いくつかの新機能が実装された。ここでは,そのうちの仮想マシンの可用性を高める機能である「VMware HA」と,仮想マシンに対してリソースを最適に割り当てる「VMware DRS(Distributed Resource Scheduler)」について説明する。

 VMware HAとVMware DRSは,どちらも仮想化環境特有の機能である。これらの機能で実現できることをきちんと把握してシステムを構築することで,システムを仮想化環境に移行するメリットが増大する。VMware HAは非常に簡単な設定でフェイル・オーバー環境を構築できる。フェイル・オーバーは仮想マシン単位であり,OSやアプリケーションの障害には対応できないが,逆にOSやアプリケーションに依存しないという利点がある。仮想化環境では1台の物理サーバーの停止が複数台の仮想マシンの停止に直結する。そのため,仮想マシンの可用性の確保,特に計画外停止に対する対策は課題の1つだった。VMware Infrastructure 3では,計画停止にはVMotionを使用し,計画外停止にはVMware HAを使用できる。以前のバージョンに比べて仮想マシンの可用性を大きく高めることが可能になった。

ハードウエア障害に対応

 これらの新機能の設定は,クラスタのプロパティ画面で行う。それぞれの機能についてチェック・ボックスにチェックを入れることで,その機能が有効になる(図1)。クラスタとはVMware ESX Serverホストの集合体である。登録されたVMware ESX ServerホストのCPUやメモリー・リソースを集中管理する機能も提供する。

図1●クラスタのプロパティ画面
図1●クラスタのプロパティ画面
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 VMware HAは,VMware ESX Serverホストのハードウエアに障害が発生したとき,そこで稼働していた仮想マシンを,自動的にクラスタ内の別のVMware ESX Serverホストで再起動する機能である。(図2

図2●VMware HAの動作
図2●VMware HAの動作

 この機能を使うと,VMware ESX Serverホストの障害時に,仮想マシンのダウン・タイムは発生するものの,停止時間を最小限に抑えられる。一般に,アプリケーションのフェイル・オーバーを実現するためには高価なソフトウエアが必要であるし,その構築には複雑な設定が必要である。VMware HAを使用することで仮想マシン単位のフェイル・オーバー環境が簡単に設定できる。また,VMware HAでは,仮想マシン上で動作するOSやアプリケーションの種類に関係なくフェイル・オーバー環境を構築できる点もメリットの1つである。

 ただし,VMware HAが動作するのはVMware ESX Serverホストの障害時のみであり,仮想マシンのOSやアプリケーションが障害を起こしたときは動作しない点に注意が必要である。