記者は,今年の9月1日付けでITpro編集に異動するまで,ずっと雑誌編集部に所属してきた。その間,「情報の質さえ良ければ,定期的にお金を払ってくれる読者は必ずいる」ことに疑いを持っていなかった。

 ところが最近,若い人,特に20代前半の人に話を聞くと,ほぼ例外なく「雑誌は定期的には読まないですね。本屋で気になる特集を見付けたら,買う程度です」と言う。ある25歳のエンジニアは,「自分たちの世代はまだ本や雑誌を読むほう。20歳くらいの世代は,さらに全然感覚が違う。完全に『情報はタダ』という意識」と話す。20代の人たちのこうした生の声を聞くにつれ,記者も「将来的には,情報の無料化は避けられないな」と思うようになった。

 考えてみれば,日本でインターネット接続サービスが始まったのは,十数年前の1990年代前半。現在20歳くらいの若者にとって,インターネットは物心がつく前から存在していた。彼らは,好奇心旺盛な中学,高校時代,インターネットを使って無料で情報を得るのが当たり前だった世代だ。

 記者などは,社会人になってから世界中の情報を瞬時に無料閲覧できるWebやインターネット・メールの登場に衝撃を受けた世代だが,インターネットの洗礼を思春期に受けるのと,大人になってから受けるのとでは,影響度合いは全く異なるだろう。

 そう考えれば,今の大学生よりも若い世代が「情報はタダ」と当たり前のように考えたとしても不思議はない。さらに,最近では日本でも「R25」などのフリーペーパーが市民権を得てきた。求人情報や住宅情報なども,フリーペーパー化やWeb化が急速に進んでいる。様々な分野で「情報の無料化」は加速しているのである。

 ITproも,無料で様々な情報を提供している。そういう意味では,若い人たちの「情報はタダ」という考え方に合ったメディアのはずだ。ただ今のITproを,もっと若い人にとって魅力あるサイトにするには,まだまだやることは多いと思っている。例えば,ITproの読者同士が自由に意見を交換する掲示板があってもいいし,スキルアップやキャリア設計に関する解説や連載,コラムがもっとあっていい。ブックレビューやメンタルヘルス,ライフスタイルに関するコラムもあっていいだろう。

 記者は,こうしたコンテンツを含む,主に若手~中堅のエンジニア向けのサイトをITproの中に新しく作りたいと考えている。無料のスキルアップ/キャリアアップ雑誌を作る感覚だ。サイトのオープンはまだ先だが,こんな企画をやってほしいという要望があれば,ぜひコメントをお寄せいただきたい。