前回に引き続き,日経コミュニケーションが読者モニターである日本国内の有力企業452社に対して,MNPの利用意欲を訪ねた緊急アンケート結果を紹介する。今回は,法人ユーザーがMNPで選びたい携帯電話事業者などに関する集計結果を示す。前回は,法人ユーザーが個人ユーザーを上回るMNPの利用意欲を示した結果などを紹介した。

変更先はドコモとKDDI(au)が人気を二分

図1 MNPを利用して携帯電話事業者を変更する場合,どの携帯電話事業者に変更する?
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図1●MNPを利用して携帯電話事業者を変更する場合,どの携帯電話事業者に変更する?

 MNPを利用したい企業ユーザーが,変更先として希望する携帯事業者を見ると,NTTドコモとKDDIが人気を二分する結果となった(図1)。個人ユーザーを対象としたアンケートではKDDIが一番人気になることが多いが,法人ユーザーの中ではNTTドコモの強さが目立つ。一方で,ここにきて法人向けサービスを急拡充しているKDDIが,NTTドコモに猛迫しているという見方も成り立つ。ソフトバンクモバイルは,法人向けサービス拡充が出遅れている分,苦戦している。

 続いて企業が法人契約している携帯電話事業者別に,MNPの利用意欲が高いか低いかを示そう。これは各事業者に対する評価の1指標となる。

 最も数が多いNTTドコモの法人ユーザーは,約3割がMNPの利用意欲を示した(図2)。ほぼ全体の結果と同じ値だ。変更先として選ぶ事業者は,KDDIのほかにNTTドコモも多い(図3)。これは複数事業者の端末が混在している社内の状況を,NTTドコモに統一しようという動きの現れだろう。

図2 NTTドコモ・ユーザーのMNP利用意欲
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図2●NTTドコモ・ユーザーのMNP利用意欲
図3 NTTドコモ・ユーザーが考える移行先
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図3●MNPを利用して携帯電話事業者を変更する予定は?

 次にKDDIと法人契約している企業のMNP利用意欲は,14%という低い結果になった(図4)。しかも「変更する予定である」としている企業はゼロであり,KDDIを利用中の企業は現状のサービスに対して不満が少ないと見える。なお数は少ないが,MNPの利用意欲を見せた企業の中では,NTTドコモが変更先として一番人気だった。

 一方のソフトバンクモバイルだが,同社と法人契約している企業ユーザーは絶対数が18社と少ないこともあり,評価が難しい結果となった。その中では,2社が「変更する予定である」と強い意志を示した点が目を引く(図5)。

図4 KDDI(au)ユーザーのMNP利用意欲
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図4●KDDI(au)ユーザーのMNP利用意欲
図5 ソフトバンクモバイル・ユーザーが考える移行先
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図5●ソフトバンクモバイル・ユーザーが考える移行先

 これらの結果から,携帯電話の法人ユーザーがMNP以降にどのように動くのかを図6にまとめた。MNPの開始に伴って流動化する法人ユーザーを巡って,NTTドコモとKDDIが競い合う形になりそうだ。

図6 MNPによって法人ユーザーはこのように動く
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図6●MNPによって法人ユーザーはこのように動く

コストメリットを感じない法人ユーザーも多い

図7 MNPを利用する予定がない理由(複数回答,数字は社数)
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図7●MNPを利用する予定がない理由(複数回答,数字は社数)

 企業ユーザーのMNP利用意欲は約3割と個人ユーザーよりも高いとはいえ,残る約7割の企業がMNPの利用を考えていないことも事実。MNPの利用予定がない理由としては,「変更する理由がない」「コストメリットを感じない」という回答が多かった(図7)。自由意見を見ると,1台当たり約5000円以上かかるMNPの変更手数料をかけてまで,事業者を変更するメリットが見えてこないという声があった。

 また「メール・アドレスが変わってしまうこと」をネックとする法人ユーザーも少なからず存在した。法人ユーザーでも,携帯電話のメール・アドレスを業務に活用している様子もうかがえる。

MNPや携帯電話サービスに対する要望の数々

 今回の緊急アンケートでは,MNPの利用意欲についての回答だけではなく,MNPや携帯電話サービス全般についても自由記入してもらった。賛否両論が入り交じったその意見からは,法人ユーザーが真に求めるモバイル・サービスの形や,現在のMNP制度の問題点などが浮かび上がってくる(図8)。

図8 法人ユーザーの生の声
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図8●法人ユーザーの生の声