先日,訪問履歴を残さないなどプライバシを保護してくれるWebブラウザ「Browzar」に,スパイウエアではないかという疑いが生じた。このブラウザの登場と,それが話題になって以来,筆者は同様の機能を持つブラウザがないか探し回った。その結果,条件を満たすブラウザを2つ見つけたのでそれらを紹介したい。

Firefoxのポータブル版

 1つ目は,「PortableApps.com」が提供している「Mozilla Firefox- Portable Edition」というWebブラウザである。「Firefox」のコードをベースにしているが,John T. Haller氏が個人的に開発したものだ。2004年6月に初版がリリースされたFirefox Portableは,ぜい弱性が発見されるたびに必要なセキュリティ修正が加えられていて,常に最新の状態になっているようだ。

 Firefox Portableは,USBメモリーなどのポータブル・メディアなどにコピーすることに重点に置いて設計されている。Firefox Portableは,容量の小さなUSBメモリー(フラッシュ・ドライブ)やCD-ROMにインストール可能で,これらがロックされていないほぼすべてのPCで使用できる。

 通常のFirefoxと同様に,ポータブル版には拡張機能やテーマをインストールできるが,Firefoxとは異なり,Firefox Portableは使用方法の情報は保存されないようになっている。ダウンロード履歴はブラウザを閉じると消去され(しかし,FirefoxPortable.exeのプロセスを手動で停止する場合は消えない),URL履歴とフォーム・データの保存はデフォルトで無効になっていて,ディスク・キャッシュはデフォルトで使用されない。しかし,それらのデータをポータブル・メディアに書き込んだり(そのメディアが書き込み可能である場合に限られる),キャッシュを使うように設定することも可能だ。

 Firefox Portableを使ってみたが,使い勝手は上々だ。自己解凍型の実行ファイルを実行すると,すべての必要なファイルが1つのディレクトリにコピーされる。サイズは約16.5Mバイトだ。なお他のFirefoxが実行中の場合は,Firefox Portableを実行できないことに注意が必要だ。

匿名ネットワークを使うブラウザ

 2番目のツールは「Torpark」だ。ハッカー集団であるCult of the Dead Cow(cDc)の庇護の下で活動する「Hacktivismo」が開発したTorparkは比較的新しく,Firefox Portableのコードをベースにしている。このツールは匿名ネットワーク「The Onion Router(Tor)」ネットワークを使っているという点においてとても面白い付加価値がある。

 Torは,比較的匿名性の高いサーバー間でネットワークを構築するソフトウエアで,サーバー同士を自動的に結び付けて双方向の暗号化とルート・トラフィックを行う。その中心として,Torのクライアントはソケット(Socks)プロキシとして機能する。

 開発者は,「Torparkは事前に設定されているので,インストールも必要なく,USBメモリーから実行でき,ブラウザやコンピュータに足跡を残しません」という。とてもすばらしいように聞こえるが,欠点が1つだけある。Torは時々動作が遅くなるのだ。Torサーバーの管理は有志が行い,管理者は自分が管理するTorサーバーの帯域を規制できるが,多くのTorサーバーの管理者は小さな帯域しか割りあてていないようだ。しかし,匿名でWebサーフィンする必要があるなら,ちょっとくらい遅くてもその価値はあるだろう。

 Torparkはとても簡単に使用できる。TorparkはTorクライアントもインストールすることを除けば,インストール手順はPortable Firefoxと同じだ。インストールのサイズは約27MBだ。独自のWebインターフェースには,すべての標準的なFirefoxのコントロールボタンのほかに2つボタンが追加されている。1つはTorネットワークを有効化,無効化するボタンで(無効化するとTorparkをTorなしで使い,暗号化せずにWebを閲覧する),もう1つはTor回線をフラッシュするボタンだ。後者の機能を使うと,インターネットへ接続するとき,新しいTorサーバー使うようにできる。回線をフラッシュしても速度が改善するとは限らないが,速くなることもあるためこの機能は有効だ。

 なおFirefox PortableにもTorparkにもスパイウエアやアドウエアは入っていない。両方ともFirefoxのように検索ツールをカスタマイズできるだけである。