ポイント

●送信メールサーバー(SMTPサーバー)を第三者に不正使用されにくくするためには,POP before SMTPやSMTP認証が有効である
●なりすまし,盗聴,改ざんなどの脅威に対しては,S/MIMEやPGPの利用が有効である
●受信メールサーバー(POPサーバー)がメール受信者を認証する時,ユーザー名とパスワードは平文でやり取りされる。POPサーバーとメーラーの両方が対応している場合はAPOPを利用する方が良い

 電子メールが広く浸透している中,「添付ファイルを不用意に開かない」「本文中のリンクを不用意にクリックしない」など,利用上の注意点は徐々に定着してきました。しかし注意しなければならないのは,メールを「見る時」だけではありません。メール・ソフト(メーラー)を「設定する時」にも気をつけておくべきことがたくさんあります。今回は,メールサービスの仕組みから,どんなところに気をつける必要があるか,という視点で電子メールのセキュリティを勉強します。

メールサービスの仕組み---SMTPとPOP

 電子メールにはHTTP(hyper text transfer protocol)を利用してメールを送受信する仕組み(Webメールと呼ばれる)や,IMAP(internet messaging access protocol)と呼ばれるプロトコルを利用してメールを受信する仕組みもありますが,今回はSMTPとPOPを利用する一般的なメールサービスを見ていきます。

 SMTP(simple mail transfer protocol)は,クライアントからメールサーバーにメールを送信するときと,メールサーバー間でメールを転送する時に利用するプロトコルです。一方のPOP(post office protocol)は,メールサーバーに保存されている受信メールを取り出すためのプロトコルです。以上を踏まえて,送信者から受信者にメールが届くまでの流れを確認しておきましょう(図1

図1●メールが送信者から受信者に届くまでの流れ
図1●メールが送信者から受信者に届くまでの流れ[画像のクリックで拡大表示]

 送信者がメールを送るとき,まずは送信者のメーラー(メール・ソフト)に設定してあるSMTPサーバーにメールが送られます(1)。これを受け取ったSMTPサーバーは,メールのあて先ドメイン名から,どのメールサーバーにメールを転送すればいいかをDNSサーバーに問い合わせます(2)。そして送信側SMTPサーバーはDNSサーバーからの回答を基に,あて先となるメールサーバーにメールを転送します(3)。

 これで受信側のメールサーバーにメールが届き,受信側メールサーバーは受信メールをメールボックスに保存します(4)。ここまでのやり取りにはSMTPが使われます。

 受信者は,適当なタイミングでメールサーバーにアクセスし,ユーザ名とパスワードによる認証を受けて自分のメールボックスの中に入っているメールを受信します(5)。このときにはPOPが使われます。