図1●VMware Playerを利用し,Windowsの1つのウインドウ内で動作する超漢字
図1●VMware Playerを利用し,Windowsの1つのウインドウ内で動作する超漢字
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図2●多くの異体字を利用できる
図2●多くの異体字を利用できる
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図3●超漢字で検索した文字をExcelに張り付けられる
図3●超漢字で検索した文字をExcelに張り付けられる
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 現在,最もホットなIT関連の話題の1つが「仮想化」だ。ITproでも,「VMware」や「Virtual Server」「Xen」といった仮想化ソフトウエア,「Intel VT」や「AMD-V」といった最新CPUが備える仮想化支援機能などに関する解説記事を連載し,それらをまとめたムック「仮想化大全」を発行した。また,先日開催したセミナー「ITproフォーラム 仮想化の全てがわかる一日」が大盛況だったことからも,仮想化に関する注目度の高さが伺える。

 仮想化は,一般に情報システムの管理コストを下げたり,利用効率を向上させたりする利点が大きく取り上げられる。実際,仮想化大全でも,そのような話題を中心に編集した。しかし仮想化の利点は,情報システムの管理コスト削減や利用効率向上だけではない。未知のソフトウエアを低いリスクで試用できる点も見逃せない。

 例えば,WindowsユーザーがWindows以外のOSを実機で試そうとした場合,ハードディスクのパーティション設定や既存のWindowsとの共存など,いろいろとハードルを越える必要がある。仮想化技術を利用すれば,簡単に,しかも既存のWindows環境にはほとんど変更を加えずに,Windows以外のOSを動かせる。

 このような仮想化技術の利点に着目して,パーソナルメディアは自社開発のOSをWindows上で動かせるようにした。「超漢字V」である。これは,同社のOS「超漢字」を,無償の仮想化ソフト「VMware Player」の仮想マシン・イメージとして提供したものである。Windowsの1つのウインドウ内で超漢字が動作する(図1)。

 ちなみに超漢字とは,BTRONをベースにしたOSで,最大の特徴は多言語・多漢字に対応する点である。主に人名などに利用される漢字の「異体字」や「旧字」だけでなく,「トンパ文字」や「変体仮名」など,18万字以上が利用できる(図2)。Webブラウザ,メール・クライアント,ワープロ,図形編集,表計算,カード型データベースなどのアプリケーション・ソフトを標準で備えているので,それだけでも十分利用価値はあるが,現在のIT環境では,Windows抜きにはできない場面が多い。そういうときにうってつけなのが仮想化技術だ。Windowsと同時に超漢字が利用できるだけでなく,超漢字アプリケーションからWindowsアプリケーションにテキストをコピー&ペーストできる(図3)。その際,超漢字が備える文字検索機能を利用できる。超漢字とWindowsとの間で,ファイルの共有も可能だ。

 超漢字V以外にも,VMware Playerで動作するOSの仮想マシン・イメージはたくさんある。VMwareは「バーチャル・アプライアンス」として,様々な用途に向けてカスタマイズした仮想マシン・イメージをWebサイトで無償配布している。Linuxが中心だがFreeBSDなどを利用したものもある。中には,ReactOSといった開発途中のWindows互換OSもある。ダウンロードすれば,すぐに利用可能だ。

 例えば危険なWebサイトにアクセスするのに,Webブラウズ用バーチャル・アプライアンスを利用すれば,セキュリティ・リスクを低減できる。VMware Player上で動作するOS環境は,VMware Playerの下で動作しているWindowsとは完全に独立している。万が一バーチャル・アプライアンスの環境がウイルスに感染してもWindows環境には影響がなく,仮想マシン・イメージを削除すればウイルスを完全に退治できる。

 仮想化はサーバー環境を中心に実運用環境で利用が始まったばかりだが,今後はクライアント環境にも普及し,バーチャル・アプライアンスのような使い方が広まるだろう。