顧客の流動化が促進される番号ポータビリティ制度の開始を好機とみて,携帯電話会社が市場シェア拡大をにらみ動き出した。この中で,ナンバーワンの地位を確保するための“守り”と“攻め”の2つの策が要求されるのが,NTTドコモである。他社の攻撃を迎え撃ち,さらに新たな顧客獲得にどのような策があるのか。営業本部 営業部 営業推進担当部長の松谷正輝氏に聞いた。

番号ポータビリティ制度の開始に向けて,これまでに進めてきた準備や対策を教えて下さい。

写真1●NTTドコモ 営業本部 営業部 営業推進担当部長の松谷正輝氏
写真1●NTTドコモ 営業本部 営業部 営業推進担当部長の松谷正輝氏
 番号ポータビリティ制度の検討自体は,総務省主催の研究会に参加するなどして数年前から行ってきました。当時からこの番号ポータビリティ制度をいろいろな観点から検討してきましたが,大きな転機となったのは昨年の5月です。総務省が「携帯電話の番号ポータビリティの導入に関するガイドライン」を公表したのを受けて,それをもとに携帯電話事業者各社が互いに協議を進めることになりました。導入に向けたかなり具体的な検討を開始したのは,この頃からだったように思います。

 海外の事例を見ると,番号ポータビリティ制度を導入してもあまりユーザーに利用されていないようでした。ですから社内では,早急に取り入れるべきではないのではないかという意見があったのも事実です。しかし,総務省からガイドラインが公表されて以降は,それならば日本でいい仕組みをつくろうと決意し,約1年間かけて検討や準備を進めてきました。

 日本の番号ポータビリティ制度では,事前に予約をとる方法を採用しました。これによって,海外の例と比較すると処理時間や優遇性などの面で,よりお客さまに利便性の高いサービスを提供できると考えています。

 準備に際して,NTTドコモとして注力して取り組んだことが2つあります。1つは料金を分かりやすいものにすることです。もともとNTTドコモでは,利用するユーザーが増えるに従って料金を値下げして,より安価に使えるようにすること目指してきました。しかし,“ドコモは料金が高い”というイメージが過去何年間かにわたって付いていたようでした。ですから私たちには,この誤解を解くという課題がありました。

 そのためには,単にプロモーションをやっても駄目ですので,きちんとした仕組みを作ってそれを理解していただくことが大切です。そこで,料金の分かりやすさを明確化した仕組みづくりを進めてきました。具体的には昨年の11月に,第2世代(2G)携帯電話のmovaと第3世代(3G)のFOMAで統一した新料金体系によるサービスを開始しました。この新料金プランでは,通話料金の課金単位を一律30秒に統一して分かりやすさを追求しました。また今年3月からはパケット定額制サービス「パケ放題」をすべてのFOMA料金プランで使っていただけるようにするなど,お客さまに分かりやすく使いやすい料金サービスを提供することに努めてきました。

  2つ目の取り組みが,サービス品質の向上とエリア拡大です。movaは当初から品質やエリアについて,最も良いというサービスを提供しているという自負がありました。しかし,FOMAについては初期投資をして設備を拡充するいく過程で,movaと比較するとエリアなどがかなり劣るとの指摘があったのも事実です。

 これからFOMAを主軸にサービスを展開していくためには,FOMAのネットワーク品質をmova並みではなく,movを超えるレベルまで引き上げなければ,ユーザーに満足してもらえないでしょう。そこで,FOMAのネットワーク品質の向上に注力しています。基地局の増設は着々と進めており,約2万5000の基地局を2006年度末には3万4800基地局にまで増やす計画です。

 また基地局を増やすだけではなく,電波干渉などが起こらないようにチューニングを重ねたり,最近では屋内での使用が常識ですので,屋内でのエリア作りも進めています。また,ユーザーの要望を聞いてサービスの改善を図る制度も開始しました。ネットワーク品質の向上は終わりがあるものではなく,今後も継続してさらなる改善を行っていきます。