前回に引き続きA&Vフェスタ2006での注目の新製品を紹介する。

ヤマハ

 「Soavo-1」は,1台18万9000円。ブラウンとナチュラルの2色があり,2006年9月下旬の発売である。

 3ウェイ・4スピーカ構成のトールボーイ・スピーカ。「Soavo」(ソアヴォ)は,イタリア語で“優美な”を意味する「Soave」(ソアヴェ)と,“歌声”を意味する「Voce」(ヴォーチェ)を組み合わせた,このスピーカ・シリーズのための造語。人の“歌声”をはじめとする中音域をリアルに再現するための13cmミッドレンジ・ユニットを採用し,新開発3ウェイ・4スピーカの構成としている。ヤマハによると,欧州でのチューニングも加えて,素直で色づけのない音色や透明感,微妙な音のニュアンスまでも正確に再現する優れた解像度,豊富な情報量により優れた音場感を実現し,リアリティあふれる再生音をあらゆる音楽ジャンルで楽しめるという。来春には,「Soavo-1」と同一のコンセプトに基づくブックシェルフ型スピーカを発売する予定。

 トゥイータには,接合部のロスを排除し,高域の情報量と解像度を向上させるアルミ・マグネシウム合金製のDC-ダイヤフラムを採用。DC-ダイヤフラムならではのクセのない伸びやかな音色と,キャビネットからの振動を抑えるアルミ・ダイキャスト製の重量級トゥイータ・プレートとのコンビネーションにより,複雑な倍音成分を持つバイオリンやピッコロなどの音もニュアンス豊かに表現できる。

 専用ミッドレンジを設けることで中音域の再生能力を徹底追求している。A-PMD(Advanced Polymer Injected Mica Diaphragm : ペーパー・コーンの俊敏さと樹脂コーンの剛性を併せ持ち,ナチュラルでクリアな音色を全帯域にわたって再生できる)振動板と高剛性ダイキャスト・フレーム,エッジワイズ巻きリボン線ボイス・コイルなどを組み合わせた13cmミッドレンジ・ユニットは,音楽の主役というべきヴォーカル,サックスなどのソロ楽器,オーケストラの第一バイオリンなどのファンダメンタルとなる音域を,張りのあるクリアな音で表現する。

 低域は,量感とハギレの良さを両立するため,16cm口径A-PMDユニット2本によるダブルウーファ構成を採用。大音量時の共振を徹底的に抑え込む高剛性アルミ・ダイキャスト・フレーム,エッジワイズ巻きリボン線ボイス・コイルと大型フェライト磁石との組み合わせによる強力な駆動システム,大容量キャビネットと木製フレア形状ポートの適切なチューニングなどにより,力強くスピード感あふれるベースやドラムスの音の表現を可能にしている。

 エンクロージャは,平行面をなくし,バッフル面の上方左右を傾斜させ,内部にはスラント・パーティションおよびバーチカル・ラダー補強を採用することにより,音質を損なう定在波や回折を低減させるとともに,卓越した剛性を確保。単に不要共振を抑えるだけでなく,キャビネット外板の振動までも高度にコントロールする工夫をしている。


図1●ヤマハのSoavo-1

日本電産ピジョン

 「ORPHEUS WB-28A」はアンプ内蔵の小型スピーカ。シルバ―と黒の2色があり,2台で6万2790円。

 テレビ,パソコン,携帯オーディオ・プレーヤ(DAP)向けのアンプ内蔵スピーカ。1kHz以下の振動板の動きを静電容量の変化で検出し,MFB(Motion Feed Back)をかけ,自社製8cmウーファの低域を補正している。このタイプのセンサーは直線性がよく,重低音を良い音質で再生できる。トゥイータは2.5cmのアルミ・ドーム型。フライング・モールのデジタル・アンプを高域と低域用に専用として2台を内蔵。その結果,全高調波歪率は80Hz,105dBで6%と従来の同一口径製品の20%から大幅に改善している。


図2●日本電産ピジョンのORPHEUS WB-28Aアンプ内蔵小型スピーカ

テイクティ

 低音改善を行うユニット「TAKET-WHD」は3万9900円。2006年8月発売で,10月に価格を変更した。これ以外にヘッドフォン「TAKET-H2」(8万9250円)と,昇圧トランス「TAKET-TR2」(6万9300円)が必要。

 高音質ヘッドフォン「TAKET-H2」のユニットを,“台”としての「TAKET-WHD」に設置し,低域の立ち上がりを改善する製品。解像度が増し,深みと立体感のある低音に変貌できる。

 スーパー・トゥイータの「TAKET-BATPRO」(2台で7万9800円)は,フィルタ回路不要で接続でき,高域の広がりと立体感のある音場を与える。低音にも良い影響を与える。


図3●スピーカの上に設置してある銀色の物体がテイクティのスーパー・トゥイータ「TAKET-BATPRO」。下に設置してある茶色の小さい物体は,低音改善を行うユニット「TAKET-WHD」。ヘッドフォン「TAKET-H2」のユニットを使用している

リード企業

 リード企業の円筒型無指向性スピーカは,振動板にアルミ・ハニカムを採用した8cm平板駆動スピーカを採用した製品。2台で19万4250円。高さ38cmの円筒型ケースはアルミ製。周波数特性は120Hzから15kHzで,音圧レベルは75dB/W.mと低いが,ビーム状に音波が発生するので,音が減衰せずに遠くまで届き,音量を小さくしても良く聞こえる。BGMを流しても会話に支障がない,残響の大きい場所でも明瞭度が高いなどの特徴がある。展示会,ホテル,喫茶店,店舗,病院,駅などの用途に向く。オーディオ用としては低域が不足するので13cmのアルミ・ハニカムのウーファも開発中。高域はリボン・トゥイータを採用する予定。


図4●リード企業の円筒型無指向性スピーカ

トザワ研究所

 「戸澤式アクリル管スピーカ」は,円筒型無指向性。2006年末発売予定である。吸音材として,「吸音レゾネータ」(紙風船状の吸音材)を使用している。スピーカの中で定在波が発生すると,男性の声などがこもった音になるが,「吸音レゾネータ」は,定在波の発生を抑える効果がある。従来の吸音材よりも,低域の吸音効果が大きい。人の声を生々しく再現し,楽器の中域が明瞭に表現されるのが特徴。スピーカの箱の中に入れるための「吸音レゾネータ」単体も販売されている(販売:コイズミ無線)。


図5●右側が戸澤式アクリル管スピーカ。「吸音レゾネータ」が上から下まで設置されている。左はより小型の試作機(参考出品)

神戸音響工房

 小型スピーカ「KSP-10」は2006年11月中旬発売予定。価格は未定。

 20mm厚のアサダ桜の集成材を使った小型スピーカ。Altech CF404-8A 10cmフルレンジを使用。このユニットは94dB(1m/1w)という高能率。楽器の音が生き生きと再生され,存在感のあるヴォーカルを楽しめる。この木材は,カバやカエデよりも比重が大きく強度も高い。幅240mm,高さ300mm,奥行き195mm。


図6●神戸音響工房のKSP-10