10月3日から7日にかけて開催された「CEATEC JAPAN 2006」。その最大の話題の一つがBlu-ray Discであったことは間違いないだろう。では,そのBlu-ray DiscプレーヤーはOSに何を使っているのだろうか。会場の説明員に尋ねたところ,ソニーのBlu-rayレコーダー,松下電器のブルーレイDIGA,ともに答えは「Linux」だった。
ではCEATECでひときわ目を引く,ブースを埋めつくすほどに並んだ薄型テレビはどうだろうか。ソニーのBRAVIA,松下のVIERA,どちらも「OSはLinux」とのことだ。
気がつけば数百万台規模のLinux
ではHDDレコーダーは? 松下のDIGAもLinux,ソニーのスゴ録もハイビジョン対応のものはLinuxを採用している。
松下のデジタル家電向け統合プラットフォームである「Uniphier」も標準OSはLinuxであり,現在Uniphierを採用している家電には原則Linuxが搭載されているという。
「家電にもネットワーク機能が欠かせなくなってきている。そうなるとLinuxの豊富なネットワーク関連ライブラリとアプリケーションは大きな魅力」と松下の担当者は語る。確かに,今やインターネット接続機能は家電にあって当たり前の機能であり,家電は今やネットワーク機器になったと言える。
それにしても,薄型テレビやHDDレコーダーのトップメーカーが標準採用しているということは,いつの間にか年間数十万,数百万台の単位でLinux搭載家電が出荷されているということになる。
携帯電話でも,NTTドコモだけで2005年度に出荷されたLinux搭載機種は1000万台規模という(関連記事)。
企業の枠を越えた共同開発が進化させた
無論,汎用OSであるLinuxには家電向けではない部分も多々ある。しかし,組み込み向けLinuxの推進団体であるCE Linux Forumなどを見ると,起動時間の短縮やリアルタイム性の向上,メモリー・サイズやパワーマネジメントなど活発な改良が行われていることが分かる。CE Linux Forumに参加しているのは主に企業の技術者であり,多くの技術者が企業の枠を越えてLinuxを進化させている。
2006年6月にはNTTドコモ,Vodafone,NEC,松下,Motoloraなどの6社が,Linuxベースの携帯電話向け基盤ソフトを共同で開発することを発表した(関連記事)。
ACCESS 副社長の鎌田富久氏も指摘するように(関連記事),OSが何であるかは最終ユーザーである消費者にとっては関心事ではない。差別化ポイントではないOSのレイヤーでは協力し合うことで,互いに開発コストを削減できる。いわば産業レベル,社会レベルでの開発投資コスト削減と言えるかもしれない。