本田 恵一 アイ・ピー・ビジョン
代表取締役
本田 恵一

SIPベースのIP電話/インターネット電話サービスは数多くある。また、企業にもSIP準拠のIP-PBXが導入されている。しかし、ほとんどが独立している。レガシーな電話網を経由して電話のレベルでつながっていたとしても、SIPのレベルではつながっていない。今、それらを本当の意味で、つまりSIPを使ってインターネットを介して相互接続しようという動きがある。これはピアリング・サービスと呼ばれている。

 SIP(Session Initiation Protocol)ベースのIP電話/インターネット電話サービス(SIPサービス)を展開しているISP(インターネット・サービス・プロバイダ)は、筆者らが調べた限りでも数百存在する。海外では先に紹介した「Gizmoプロジェクト」や「Free World Dialup」などがある。日本では「G-LEX」や「CyberGate」「agilephone」などがあり、050/0AB~J番号を利用する、いわゆるIP電話サービスもある。また、企業などにはSIP準拠のIP-PBXが多く導入されている。

 
図1●SIPアイランド  
 しかし現在、特に日本に存在するSIPサービスやIP-PBXの多くは、インターネットから見てクローズな状態にある。同じISPのネットワーク内、または同じIP-PBXにつながったSIP電話機同士は多彩なサービスが提供される。しかし、それが異なるISPのネットワークをまたがるなどとなると、通話程度のサービスにとどまっている。SIPサービス間は本当の意味でSIPレベルではつながっていないため、“SIPアイランド”と呼ばれることがある(図1)。

 これらSIPアイランドの間に、SIPの橋をかけようという動きがある。SIPのピアリングである。SIPサーバー間をインターネット経由で接続するサービスが始まりつつある。SIPの機能をフルに利用できる。単なる通話だけでないSIPの持つ機能を、ISP間やIP-PBX間で使えるようになる。

SIPピアリング誕生の機運高まる

 「IP電話サービス同士は、すでにつながっているのではないか」と不思議に思うかもしれない。しかし実際は、ほかのSIPサーバーとはゲートウエイを経由して電話網(PSTN)やIP電話網でつながっている程度なのである。そのため、電話機能だけがつながっている、ほかのインターネット電話網とは接続できない--などという場合がほとんどである(図2)。本当はオープンなインターネット上で自由につながるということが重要だと思うのだが、現実はそうではない。もちろん、セキュリティや通信品質などの問題を考慮して、あえてクローズにしているという側面もあろう。しかし、SIPならではの機能が利用できないのも事実である。

図2●SIPはプロバイダのネットワーク内だけで利用されることが多い

 たとえば、050番号や0AB~J番号を利用するIP電話サービスでは、ほかのプロバイダとの接続は、音声品質などの面からIP電話網を経由する。インターネット電話サービスを提供しているISPでも、ほかのISPのユーザーにインターネット経由で電話しようと発信しても、遮断されるケースが多いことに気付かされるであろう。意図してか、単に想定していないだけなのかは別として「SIPアイランド」なのである。