VMware ESX Serverを利用した仮想環境を構築するには,事前に検討しなければならないことがある。ハードウエア構成,ネットワーク構成,ゲストOSの管理方法などだ。ここでは,これらに加えて,VMware ESX ServerとゲストOSの大量展開方法やバックアップ方法,システム管理ソリューションなど,具体的なシステム構築のポイントについて紹介する。まずは,VMware ESX Server 3.0の構成要素とゲストOSの実装方法などに関して説明する。

ESX Serverを構成する要素

 VMware ESX Serverは,「VMkernel」「サービス・コンソール」「ゲストOS」の3要素から成る(図1)。

図1●VMware ESX Serverの構成要素
図1●VMware ESX Serverの構成要素

 VMkernelは,VMwareが開発した仮想化を実現するための独自のカーネルである。ゲストOSの下で動作するレイヤーで,ハードウエア・リソースをスケジューリングする。VMwareは仮想化ソフトウエアとして,ほかにVMware ServerやVMware Workstationを出しているが,これら2つの製品は,WindowsまたはLinuxの上にVMkernelをアプリケーションとして導入する製品である。VMware ESX Serverとは仕組みが異なる。

 サービス・コンソールは,VMware ESX Serverのシステム管理機能やVMkernelを制御するためのインターフェースを提供する。HTTP,SNMPおよびAPIインターフェースや,ユーザー認証といった機能が含まれる。Red Hat Enterprise Linux AS3.0を基に作られている。通常,サービス・コンソールにIPアドレスを割り当て,遠隔地のWindowsが稼働する端末にVirtual Infrastructure Clientを導入し,ネットワーク経由で仮想マシンの作成・管理などを行う。telnetやsshを利用して遠隔地からサービス・コンソールにログイン可能だが,telnetとsshはデフォルトでは無効に設定されている。

 ゲストOSは,VMware ESX Server上で稼働する仮想マシンである。表1のOSを稼働できる。VMware ESX Server 3.0では,ゲストOSとして64ビットOSに対応したが,試験的対応である。また,64ビットOSを稼働するには,Intel VTに対応したプロセッサ,あるいはOpteron Rev. E以降のプロセッサが必要である。

表1●VMware ESX Server 3.0上で稼働可能なOS。64ビット版は試験的対応である
表1●VMware ESX Server 3.0上で稼働可能なOS。64ビット版は試験的対応である

 VMware ESX Serverは,仮想マシン・ファイルを格納する領域に,独自の「VMFS(Virtual Machine File System)」と呼ぶファイル・システムを利用する。これは,仮想マシンが利用する仮想ディスクへのI/O要求を迅速に満たすのが目的だ。VMFSはLinuxで一般的に利用されるファイル・システムとは異なる独自の実装であるため,VMFSにアクセス可能なOSはVMware ESX Serverに限定される。