10月24日から始まる番号ポータビリティ制度(MNP)を目前に控え,携帯電話各社の動向が注目される。サービス開始日を発表した8月9日に先陣を切って料金を発表したのがKDDIである。いち早く秋冬モデル全12機種を発表し,また俳優の速水もこみち(写真1)を新たにキャラクターとして起用して番号ポータビリティ制度を訴求するテレビCMを開始した。ユーザー争奪戦に向けた同社が描くシナリオを,コンシューマ事業統括本部 au事業本部 au事業企画部長の雨宮俊武氏に聞いた。

10月24日の番号ポータビリティ制度スタートに向けて,どのような準備を進めていますか。

写真1●au携帯電話のイメージキャラクターに起用された速水もこみちさん
写真1●au携帯電話のイメージキャラクターに起用された速水もこみちさん

 番号ポータビリティ制度に向けて,私たちは2つのことを意識して取り組んできました。1つ目は,お客様に喜んでいただくために何をすべきかということ。2つ目が,お客様に迷惑をかけないことです。

 前者に関して,私たちは以前から“総合力”によってお客様の満足を高めることを目指してきました。端末,サービス,コンテンツ,サービスエリアや通話品質など,これらすべてを充実させることを基本戦略としています。

 端末についてはこれまで通り,音楽,デザインを追求したバラエティに富んだラインアップを提供していきます。その一つの成果として8月末には,秋・冬の新モデル12機種をまとめて発表しました。また同時に新しいサービスを8つ発表しています。例えば,一斉同時配信を実現する技術「BCMCS」を利用したニュース配信サービス「EZニュースフラッシュ」や,通信速度を最大で下り3.1Mbps/上り1.8Mbpsに高速化できる次世代通信インフラ「EV-DO Rev.A」を活用したテレビ電話サービス(写真2),個人ポータルサービスを提供する「au My Page」などです。

写真2●KDDIの新サービス 左はニュースを自動配信する「EZニュースフラッシュ」,右はRev.Aの高速通信を利用したテレビ電話
写真2●KDDIの新サービス 左はニュースを自動配信する「EZニュースフラッシュ」,右はRev.Aの高速通信を利用したテレビ電話

 12月から始まるEV-DO Rev.Aは,NTTドコモが8月にサービスを開始し,ソフトバンクモバイルも10月の開始を発表している「HSDPA」(high speed downlink packet access)方式のさらに次世代と言われる「HSUPA」(high speed uplink packet access)方式に相当します。HSDPAは下りだけを高速化するサービスですが,Rev.Aは上りの高速化も実現しています。他社と差が出る部分ですので,しっかりアピールしていきたいと考えています。

 サービスエリアや通話品質に関しては,以前から地道な対応を積み重ねてきました。現在は「cdmaOne方式」や「CDMA2000 1xEV-DO方式」ですと,ほぼ100%の人口カバー率です。他社はエリアの拡大に追われている状況のようですが,KDDIは既にエリア展開をほぼ終えており,システムの最適化に重きを置いて作業できる段階にあります。ですから他社との決定的な違いは,モバイルシステムの最適化に費やしてきた時間とノウハウの差にあると言えるでしょう。

 また総合力の重要な要素として,カスタマ・サービスにも注力しています。例えば,接客マナーや好感度を評価する「ハートフルスタッフ資格認定制度」などを導入し,スタッフの教育や店舗の充実を図っています。

 一方,お客様に迷惑をかけないとあえて言うのは,昨年の経験があるからです。それは,ツーカーの同番移行手続きを開始した当初に事務処理が追いつかなくかったトラブルで,ここから教訓を得ました。今回の番号ポータビリティ制度でも,スタート当初は申し込みが殺到する可能性があります。このような想定の下,事務処理を円滑に進めるためオペレーションを見直したり,システムや窓口スタッフの処理能力を十分に確保するように準備しています。

番号ポータビリティの利用手数料や,顧客獲得を狙ったプロモーションなど,他社よりも常に先手を打っているように見受けられますが,これも戦術の一つでしょうか。

 番号ポータビリティ制度は,お客様にとっても非常に有益なサービスです。auという立場だけではなく,業界全体としてこのような良い制度ができたということを積極的に周知していかなくてはならないと思っています。

 たまたま私たちが番号ポータビリティに対して先行しているように見えるかも知れませんが,基本的には音楽系サービス,PC連携,通信インフラ整備などを含め,私たちが行うべきことを着実に進めているだけです。他社を意識して先手を打っているわけではなく,auらしさを見極めながらそれを伸ばしていくことを常に考えています。