9月26日から3日間開催された米インテルの開発者会議「Intel Developer Forum」(IDF)を取材するため,米国サンフランシスコ市へ出張しました。今回のIDFはプロセサ関係の大きな発表こそありませんでしたが,インテルがWeb系サービスを強く意識していることが分かる内容で,非常に興味深く感じました。インテル幹部の講演でもたびたびGoogleやYahoo!,そしてYouTubeへの言及がありました(写真1)。
さて,そのYouTubeですが,オフィスはカリフォルニアのサンマテオ市にあり,サンフランシスコからそう遠くはありません。そこで,Google Mapsで場所を確認し,行ってみることにしました。
IDFが開催されているモスコーンセンター近くでタクシーを拾い,約30分。このような経路を辿りつつ,タクシーはYouTube社の正面に到着しました(写真2)。
YouTube社が,ピザ屋と日本料理店の上にある小さなオフィスであることは知っていましたが,実際に目にして「この小さな二階建てのビルにある企業が世界を騒がせているのか」と思うと,感慨もひとしおです。
しばしの感激の後,サンマテオの街を散策することに。
歩き始めてすぐに気が付いたのは,やたらと日本料理店や日本関連の店舗があることです。YouTube社の下は日本料理店ですが,隣にも日本料理店がありました(写真3)。道を挟んだ斜め向かいには「一番館」という日本製の生活雑貨や食品を売る店があります(写真4)。さらに街を歩くと,何軒もの日本料理店を見つけました(写真5)。パッケージに謎の日本語が書かれた急須を売る店も発見です(写真6)。
もともとカリフォルニアは日本料理店の多い州だとは思いますが,この密集度にはちょっと驚きました。ちなみに,近くには見事な日本庭園もあります(写真7)。多数の日本人ユーザーから支持を受けるYouTubeですが,所在地も日本と縁浅からぬようです。
YouTubeのチャド・ハーリーCEOに遭遇
閑静なサンマテオの街を1時間ほどぶらついた後,YouTube社の前に戻りました。実は知人とYouTube社の前で待ち合わせをしていたのです。
と,そこへ突然,おそらく昼食から戻ってきたと思われるチャド・ハーリーYouTube社CEOがお付きの人と一緒にやってくるではありませんか。記者はびっくりしつつも,オフィスへ入ってゆく“時の人”を凝視。やはりここはアポなし取材を試みるべきかと,スイッチを取材モードに切り替えよう・・・としましたが,どうやら向こうに「怪しい奴」と思われたようで,YouTubeのスタッフとボディーガードらしきお兄さん二人が,険しい表情でこちらを睨んでいます。未練を残しつつも退散しました。YouTube社には取材申し込みが殺到しているらしく,おそらくアポなし取材を試みるジャーナリストも多いのでしょう。YouTube側が見知らぬ来訪者に対してナーバスになるのも頷ける話です。
インテルのWeb 2.0対応宣言だった?
話をIDFに戻します。
IDFでのインテル幹部陣のプレゼンテーションは実に“今風な”ものでした。GoogleやYouTube,「Web 2.0」,「Ajax」,「Ruby on Rails」,「MySpace」,「SaaS」(Software as a Service)といったキーワードが散りばめられた基調講演は,それだけでワクワクできる内容でした。
特に興味深かったのはジャスティン・ラトナーCTO(写真8)の「Over the horizon: The Mega-Center」(メガ・センターの勃興)と題した講演です。要旨をまとめると,(1)YouTubeのような巨大なトラフィックを生み出すインターネット・ベースのアプリケーションが増える,(2)それらを支える巨大なデータ・センター(メガ・センター)も増える,(3)メガ・センターのため,データ・センターの省電力化やテラスケール・コンピューティングの開発をインテルは進めている---といった感じでしょうか。講演の中では「半数以上のユーザーはオンデマンド型のアプリケーションを使いたい」「ローカルのHDDは巨大なデータ・ストアのキャッシュに過ぎない」という発言もありました。Google MapsやGmail,YouTubeなどを使う方にとって,ラトナーCTOの講演内容は実感できるものではないでしょうか。
今回のIDFでインテルは「Web 2.0対応宣言を行った」と,記者は思いました。「IT産業の主役がGoogleやYouTubeに変わってもインテルは決して主役級の座からは落ちないぞ」という強い意気込みを感じました。また,インテル自身も写真共有サービス「SmugMug」とYouTubeを使った「IDF写真・ビデオ・コンテスト」を開催し,CGM(Consumer Generated Media,消費者作成メディア)型でIDFの様子を広めようとしています。
なお,IDFの基調講演やプレゼンテーション資料などはIDFの公式サイトや「PodTech.net」で視聴・ダウンロード可能です。