日経コンピュータが実施した「企業のIT力調査」で浮かび上がった大手企業のシステム部門の実態を紹介する連載の2回目は、「組織の編成・運営」を取り上げる。まず、CIO(最高情報責任者)がいるかどうかを聞いたところ、「専任者がいる」と回答した企業は、調査に回答した178社のうち9.6%だけだった(図1)。「兼任者がいる」と答えた企業が60.1%に上り、「いない」という企業も29.8%あった。国内では、CIOという“機能”が完全に根付いたとは言えない状況であることがわかった。

図1●CIO(最高情報責任者)はいるか(%)
図1●CIO(最高情報責任者)はいるか(%)

 システム部員の育成策については、IT人材に必要な実務能力を定義した「ITSS」を導入するなど部員のスキルを明確にしている企業は、18.0%にとどまった(図2)。「明確にしていない」と答えた企業が78.7%に上った。システム部員の育成を体系立てて進めているユーザー企業はまだ少ないのが実態のようだ。

図2●ITSSの導入などで、システム部員のスキルを明確にしているか(%)
図2●ITSSの導入などで、システム部員のスキルを明確にしているか(%)

 さらに、ここ数年におけるシステム部員数の変化については、50.6%が「横ばい」と回答(図3)。「減少傾向」とした企業も24.7%あった。「増加傾向」と回答した企業は21.9%しかなかった。

図3●ここ数年、システム部の人数はどのように変化しているか(%)
図3●ここ数年、システム部の人数はどのように変化しているか(%)

 日進月歩で進化するITの先進動向をウオッチしながら、システムの企画や設計、プロジェクト管理などを担い、さらにはセキュリティ対策や個人情報法保護法対応、日本版SOX法対応といった作業もこなさなくてはならないなど、システム部門の仕事は増える一方である。仕事は増えるが要員は増やせないという苦しい立場に置かれたシステム部門の実情が浮き彫りになった。

 日経コンピュータでは、企業の「IT力」を、「IT投資の管理」、「ユーザー・サポート」、「IT部門の組織づくり」、「システムの全体最適化」、「品質・プロジェクト管理」、「システム企画」、「運用・保守」の7分野に基づき分析。大手企業の「IT力」を数値として算出した。詳しいランキングは、こちらのページで紹介している。

 「企業のIT力調査」は日経リサーチの協力で実施。上場企業・非上場有力企業2223社に調査票を送付し、今年5月から8月にかけて178社から有効回答を得た。調査票のうち、意見を聞くものや全体の傾向の分析だけに使うものを除いた63の設問(副設問含む)について編集部が配点。さらに、日経コンピュータが主催する「システム部長会」の会員45人から寄せられた、質問項目の重要さに関する意見を配点に反映して出したスコアを算出、偏差値化してランキングを作成した。調査票の詳細および178社の回答企業一覧も、上記で紹介したページに記載している。