Advanced Micro Devices(AMD)は,社内で通称「Rev.F(リビジョンF)」と呼んでいる最新プロセッサ(Turion64 X2,Athlon64,Athlon64 X2,Opteron)にソフトウエアによる仮想化を支援する機能「AMD Virtualization(AMD-V)」を実装した。AMD-Vは,これまで開発コード名「Pacifica」として知られており,x86アーキテクチャ上で動作する仮想化ソフトウエアの複雑な処理を軽減するとともに,仮想化システムに必要なセキュリティの強化を同時に実現する技術だ。

 AMDが考える仮想化支援技術は,Rev.Fプロセッサに搭載した機能が完成形ではなく,むしろ始まりである。今後,仮想化システムの処理性能をより向上させる技術や,2006年2月に発表したデバイスの仮想化技術である「AMD I/O Virtualization Technology」の実装を計画している(図1)。さらに,「Trinity」や「Raiden」といった,仮想化技術を核とした新たなコンピュータの利用形態も提案している。

図1●AMD製プロセッサに実装される仮想化支援機能のロードマップ
図1●AMD製プロセッサに実装される仮想化支援機能のロードマップ

なぜプロセッサの支援が必要なのか

 x86システムにおける仮想化は,VMware製品,Xen,Virtual Serverなどの仮想化ソフトウエアによって実現されている。既に仮想サーバーは,ビジネスの世界で実用段階に入っていることは,ご存じのことだろう。ある意味で,完成された技術であるソフトウエアによる仮想化(ソフト仮想化)に対し,プロセッサが仮想化支援機能を備えるのはなぜだろうか。

 ソフト仮想化は高度な技術であるが,ソフトウエアであるがための限界も垣間見える。複雑な処理をするためCPUに対して高い負荷がかかったり,OSを仮想マシン上で動作させるために改変が必要だったり,さらにより高度なセキュリティ機構の実装が難しかったりする。

 それらの限界を打破し,高信頼,高性能な仮想化システムを構築するためには,プロセッサを中心としたハードウエアによる支援が必要である。仮想化システムがより高い信頼性,安全性,そして性能を獲得すれば,今以上に適用可能領域を広げ,確実に市場を拡大できる。

 プロセッサによる仮想化支援は,仮想化ソフトウエア・ベンダーからも,歓迎されている。プロセッサが複雑な処理を肩代わりすれば,それまでそこに投入していたエンジニア達を新しい技術やサービスの開発に振り向けられ,より早く,魅力ある製品を市場に投入できるからである。