ノークリサーチ代表 伊嶋 謙二 氏 伊嶋 謙二 氏

ノークリサーチ代表
矢野経済研究所を経て98年に独立し、ノークリサーチを設立。IT市場に特化した調査、コンサルティングを展開。特に中堅・中小企業市場の分析を得意としている。

 中堅・中小企業の基幹業務システムについて、最近調査したアンケートの中で非常に興味深い結果が出ている。現在利用している基幹システムは何年に導入したかを聞いたのだが、何とその6割が1999年以前だったのである。しかも、96年以前に導入した10年も前のシステムが4割を占めていた。通常、サーバーのリース期間は4~5年が目安といわれているが、リース満了期間をはるかに超えている。

 サーバーの種類を見ると、IAサーバーが約半数で最も多いが、オフコンが34%、メインフレームが12%と、4割以上はプロプライエタリのシステムである。

 IAサーバーが基幹業務システムのメインになって久しい。オフコンからIAサーバーにリプレースしたユーザーからは、「オフコンなんてあんな高いシステムを買わされて、しかも伝票発行がメイン業務のものに、よくも何千万円もの金をかけていたものだ」という声をよく聞く。

 だが一方で、そんな高いオフコンのシステムを使っていて、さぞかし不満が強いかというと、3割以上は満足している。この結果をどう見たらよいのだろうか。

 財務・会計、販売管理などの企業のバックオフィス業務であれば、特に新たなシステムに切り替える必要性がないのか。ERP(統合基幹業務システム)など付加価値の高い業務システムは必要とされていないのか、という疑問がわいてくる。

中小企業のERP認知度は低い

 年商5億円から500億円以下の中堅・中小企業におけるERPの導入率は13%である。作り込みの業務システムがいまだに7割もある。パッケージ利用の業務システムは17%となっている。まだまだ基幹システムはオフコンライクな自社仕様に合わせたシステムであることが分かる。

 しかしERP未導入企業の3割は導入には前向きである。細かく見ていくと前向きな企業には特徴がある。それはERPの認知度の高さだ。つまりどれだけERPのブランドやベンダー、機能、メリットを深く理解できているかによって、実はERPの導入意向に大きな差が出る。

 具体的には、「ある程度機能や価格を知っている」場合では4割が導入意向を示している。それが「ERPの導入効果などを熟知している」場合だと、約7割にはね上がる。

 この結果から分かるのは、1999年以前に導入した基幹システムを利用している中堅・中小ユーザーに対して、ソリューションプロバイダがERPの営業・提案活動をしっかり行っていないのではないか、ということだ。

 ERPシステム導入となるとIT部門だけで完結できないために、経営者や現場部門も納得させるだけの提案力、コンサルティング力が要求される。ソリューションプロバイダの営業はスキルを高め、業務やITの知識も向上しつつある。だが、経営者に提案し、対等に渡り合えるほどの営業はまだ少ない。各社とも不足しているのが実情だ。

 サーバーのリース満了となる導入後5年を経過したユーザーはリプレース時期を迎え、ソリューションプロバイダの提案を受け入れやすいはずだ。ERPベンダーも中堅・中小企業向けの製品を強化している。まさに今が“塩漬け”状態になっている基幹システムをERPにリプレースする絶好のチャンスといえるだろう。