ここまで勉強した品質良太郎くんは,自社のルーターにQoS制御を設定しようと考えた。調べてみると,いろは設計事務所が導入したブロードバンド・ルーター「AR450S」は,優先制御機能を備えていた。数千円のブロードバンド・ルーターにQoS制御機能を備えるものはないが,将来を見越して機能の豊富な企業向けルーターを買っておいたのが幸いした。

優先制御機能を設定する

 良太郎くんは,ルーターのマニュアルを開いて,QoS機能の設定方法を検討。AR450Sは,帯域制御機能はないが,一番単純な優先制御であるPQを備えていた。待ちキューは3段階まで分けられる。この機能は使えそうだ。

 帯域制御機能がないのはちょっと心配だった。いろは設計事務所はルーターからADSLモデム経由でインターネットに接続している。ルーターで帯域を制限しないと,上り速度が1Mビット/秒しかないADSLモデムにパケットが溜まる可能性が高かったからだ。

 ADSLモデムはQoS機能を持っていなかった。ただ,ADSLモデムは,パケットが溜まるとルーターに対してパケットの送信を一時止めるよう信号を送るという*1。送信が止められている間,ルーターは待ちキューにパケットを溜め続ける。優先制御をかけておけば,送信を再開したときに,IP電話のパケットが真っ先に送られるはずだ。

 良太郎くんは,ルーターで優先制御をかけたうえで,ADSLモデムとルーターの接続を10Mビット/秒に固定することにした(図4)。低い速度にすれば,ADSLモデムにパケットが溜まることは減ると考えた。

図4●いろは設計事務所の優先制御の設定
図4●いろは設計事務所の優先制御の設定
アライドテレシスのブロードバンド・ルーター「AR450S」に設定した例。
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 IP電話の音声はUDPパケットで送る。しかし,そのUDPポート番号は毎回変わる。固定IPアドレスで判断させるのが一番現実的だった。結局,パソコンとVoIPゲートウエイは,IPアドレスで見分けることにした。

 こうしておいて,VoIPゲートウエイからのUDPパケットだけを最優先に設定した。VoIPゲートウエイは呼制御にTCPを使うが,それらは多少時間がかかってもかまわない。パソコンからのパケットと同じ非優先にした。

 このように設定を変えることで,IP電話の不調は減った。帯域制御まで求めるのなら,ルーターを買い換えることになるが,まあ満足できるレベルになった*2。これで様子を見て,新たに問題が起こったら上りがADSLより広帯域のFTTH(エフティーティーエイチ)に乗り換えるかな,と良太郎くんは考えている。