米Microsoftは,Exchange Serverで長年使われてきた「パブリック・フォルダ」の機能を,将来的にSharePointに移行する考えである。Exchangeのパブリック・フォルダ機能は最低でも2016年までサポートされるが,将来のことを考えるとデータの移行などを考え始めた方がいいかもしれない。その際は,Exchangeのパブリック・フォルダが様々な用途に使われていることにも注意すべきだろう。
まず最初に,Exchangeのパブリック・フォルダが現在どのような目的に使われているか,まとめてみよう。
パブリック・フォルダの基本的なコンセプトは単純である。複数のユーザーが同時にアクセスできるフォルダを提供し,電子メールや予定表データ,連絡先(アドレス帳)などをそのフォルダに格納してユーザー間で共有するのが,パブリック・フォルダの目的である。各フォルダに対してアクセス許可リスト(ACL)を設定することで,ユーザーによるデータの作成や閲覧,修正,削除をコントロールできる。また複数のサーバー上にフォルダを複製することによって,サーバーに対するアクセスを分散させて,データ共有の可用性を上げられる。
Exchange自身が使っているパブリック・フォルダ
またExchangeは,システム内部でもパブリック・フォルダを使っている。Exchange内部には特別なパブリック・フォルダが用意されており,そこにはExchangeが作成する「オフライン・アドレス帳(OAB)」が格納されている。ExchangeのOABフォーマットは,これまで何度か変更されている。従って,バージョンの違うOABファイルは,それぞれ別のパブリック・フォルダに保存されており,Exchangeのクライアント・ソフトウエアであるOutlookは,自らのバージョンに合ったパブリック・フォルダに接続して,適切なOABファイルをダウンロードするようになっている。
Exchangeはまた,ユーザーの空き時間管理にもパブリック・フォルダを利用している。Exchangeは「SCHEDULE+ FREE BUSY」というフォルダを作って,いつであればユーザーの時間が空いているかという予定表情報をそこに保存している。この情報は,ユーザーごとにビットマップふぁいるとして保存されている。空き時間情報フォルダを複製して,ユーザーのローカル・マシンに空き時間情報を保存することもできるが,この際のデータ複製プロセスは,Exchange全体の速度低下につながることがある。
本来の用途は電子メールを使った情報共有
続いて,パブリック・フォルダの一般的な使用方法も紹介しよう。
パブリック・フォルダに電子メール・アドレスを設定すれば,そのアドレスあてに送信されたメールを自動的にパブリック・フォルダに蓄積できる。例えば筆者は,自分のコラムに関して読者から寄せられるEメールを,パブリック・フォルダで受信するようにしている。こうすれば,特定のアドレスに送られた電子メールをまとめて他のユーザーに公開できる。パブリック・フォルダは,ユーザーごとに「開封済み/未開封」の状態を管理できる。
パブリック・フォルダには2つの方法で文書ファイルを保存できる。パブリック・フォルダに投稿するメッセージに文書ファイルを添付する方法と,文書ファイルを直パブリック・フォルダに投稿する方法だ。後者のような場合,文書は「freeddoc」と呼ばれる。筆者の知っているある巨大なExchangeサイトには,250Gバイトもの文書データが1つのパブリック・フォルダに納められており,ファイル・サーバーの複製として機能している。
サード・パーティ製アプリケーションがExchangeのパブリック・フォルダにデータを保存することも可能だ。現在販売されているワークフロー・ツールのいくつかは,パブリック・フォルダ間でワークフロー・データを移動させることによって,データの承認作業などを実現している。
もっとも,今年の「TechEd」で行われた調査によれば,Exchangeの顧客の中でパブリック・フォルダを利用しているのは,全体の半数に過ぎないという。
データ共有プラットフォームはSharePointに移行中
Microsoftは現在,SharePoint製品群を同社の主要なコラボレーション・プラットフォームとして位置付けている。SharePoint製品群には,無償でダウンロードできるWindows SharePoint Servicesと,SharePoint Portal Server 2003が含まれている。SharePoint Portal Server 2003の次期バージョンはSharePoint Server 2007だ。
SharePoint製品群をメインに位置付けるMicrosoftは,「新しいコラボレーション・アプリケーションは,データ・ストレージにExchangeよりもSharePointを使うべきだ」と主張している。よって今後は,既存のパブリック・フォルダのデータをExchangeからSharePointに移行することが問題になるだろう。パブリック・フォルダのデータは,コラボレーション・プロセスの根幹をなしているからだ。