携帯電話の番号ポータビリティ利用時の手数料は事業者が独自に設定する*1が,先行導入した海外の例を見ると,ユーザーの負担は軽くなる可能性がある。例えば1999年にいち早く導入した英国の場合,手数料の上限を30ポンド(約6500円)と規定し,徴収の有無は事業者の裁量に委ねた。その結果,各事業者は「30ポンド」や「20ポンド」,「加入後30ポンド以上の通話料を支払ったユーザーは無料」といった手数料を発表。しかし,実際は移行先事業者が手数料を吸収し,ユーザーが支払う料金はタダ同然になっている。

 なお,早期に番号ポータビリティを導入した欧州諸国では,移行元と移行先の双方に足を運ぶ必要があったり,移行に数日から1カ月以上かかったりする例もある(表1)。このため,番号ポータビリティの利用率は総じて低い。

表1●海外における携帯電話の番号ポータビリティの導入例
表1●海外における携帯電話の番号ポータビリティの導入例

 一方,米国や韓国のように比較的最近導入した国では,移行先事業者によるワンストップでの手続きが可能。移行にかかる時間も30分から数時間と短い。日本もこれらの国と,そん色のないレベルになると思われる。(編集部注:本記事執筆後に3社が公表した手数料はこちら

「080/090」以下3けたで事業者を特定

 では,番号ポータビリティはどのような仕組みで実現しているのだろうか。

 携帯電話番号は「080」と「090」で始まる11けたの数字になっており,各携帯電話事業者は080と090に続く3けた(CDEコードと呼ぶ)を国から割り当てられている。事業者は一つのCDEコードに付き,それ以下の5けた分を自由に利用できる。例えば「○○○」というCDEコードを割り当てられた場合,「○○○-00000」から「○○○-99999」までの10万番号を使える。各携帯電話事業者は割り当てられたCDEコードの電話番号と,それを利用するユーザー情報だけを管理する。

 しかし,番号ポータビリティを導入すると,他社に割り当てられているCDEコードの電話番号も管理する必要がある。現行のネットワーク機能や課金システムを大幅に変更しなければならない。総務省の「携帯電話の番号ポータビリティの在り方に関する研究会」が2004年4月にまとめた報告書によると,仕様の検討やシステムの開発,事業者間の接続試験などに要する期間は27カ月から39カ月程度。導入費用の合計は900億から1400億円としている。

吉田 宏平(よしだ・こうへい) 総務省 前・番号企画室課長補佐

1994年に郵政省入省。電子署名法,電波開放戦略,携帯電話の新規参入などに従事。2006年7月31日まで総務省総合通信基盤局電気通信技術システム課番号企画室の課長補佐。現在は行政管理局で国の組織・定員などの査定を担当する。