2006年10月24日から携帯電話の番号ポータビリティ(MNP)が始まる。番号ポータビリティとは,電話番号を変えずに携帯電話会社を変更できる仕組みである(図1)。

図1●10月24日から始まる携帯電話の番号ポータビリティ
図1●10月24日から始まる携帯電話の番号ポータビリティ

 番号ポータビリティがスタートすると,ユーザーの選択肢は一気に広がる。これまでは携帯電話事業者を変更すると電話番号が変わってしまうため,他の事業者が魅力的な端末やサービスを提供していても諦めるケースが多かった。今後は電話番号を気にせずに好きな端末やサービスを選べる。

 番号ポータビリティで事業者間の競争が進めば,ユーザーが受けるメリットも大きくなる。事業者間の争いは既に始まっており,各社が新しい割引サービスを投入してユーザーを囲い込む作戦に出ている。移行を希望しないユーザーでも恩恵を受けられる状況だ。番号ポータビリティの開始後は,他社の顧客を奪うためにさまざまな仕掛けを打ってくることが予想される。料金や付加価値の面で,今まで以上にメリットを享受できるようになる。

手続きはワンストップに近い

 番号ポータビリティは,総務省の省令である電気通信番号規則で定められている。2006年2月に同規則が改正され,携帯電話事業者に番号ポータビリティの提供が義務化されることになった。その施行が2006年11月1日である。NTTドコモ,KDDI,ソフトバンクモバイル(旧ボーダフォン)の既存事業者だけでなく,新規参入事業者も対象になる。

 同規則では,電話番号を双方向で移行できることを義務付けている。すなわち,自社から他事業者への移行(ポートアウト)と,他事業者から自社への移行(ポートイン)の両方である。ただし,ツーカーのように加入者の新規受付を停止したサービス,あるいは新規受付の停止を表明したサービスの場合はポートアウトだけの提供でかまわない。また衛星携帯電話や衛星船舶電話,データ通信専用端末,PHSは番号ポータビリティの対象外である。

 手続きは,以下のようになる(図2)。ユーザーは現在契約している事業者に番号ポータビリティによる解約を申し込み,10けたの予約番号を受け取る。次に移行先事業者の販売店舗に行き,予約番号を伝えて番号ポータビリティによる新規契約を申し込む。移行先事業者は移行元事業者に予約番号を照会して契約の解除を依頼。あとは通常の新規契約と同じ処理を行う。ユーザーが新しい携帯電話機を受け取れば手続き完了である。

図2●番号ポータビリティの利用方法
図2●番号ポータビリティの利用方法
移行元の事業者に事前に電話やWebで申し込んでおけば,移行先の事業者の店舗に行くだけで,ワンストップで手続きが完了する。

 番号ポータビリティによる解約は,移行元事業者の販売店舗だけでなく,電話やインターネットから申し込める。ユーザーが実際に足を運ぶのは,移行先事業者の販売店舗だけで済む。各事業者の発表によると,移行にかかる時間は最長で数時間。混み具合によるが,通常は新規契約の手続きと同じ数十分以内で終わるという見方もある。

吉田 宏平(よしだ・こうへい) 総務省 前・番号企画室課長補佐

1994年に郵政省入省。電子署名法,電波開放戦略,携帯電話の新規参入などに従事。2006年7月31日まで総務省総合通信基盤局電気通信技術システム課番号企画室の課長補佐。現在は行政管理局で国の組織・定員などの査定を担当する。