図 Asterisk製品や関連製品/サービスが続々と登場している
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図 Asterisk製品や関連製品/サービスが続々と登場している
写真 日本通運横浜中央支店のキッティング・ルーム
2500坪の倉庫の一角に,専用のスペースを設けた。ここでパソコンの設定,こん包などを実施する。大規模な案件になると,50坪のキッティング・ルームを一杯に使う。(クリックすると画面を拡大)
写真 日本通運横浜中央支店のキッティング・ルーム

 オープンソースのIP-PBXソフト「Asterisk(アスタリスク)」の市場が日本でも勢いづいてきた。Asteriskを搭載したアプライアンス(専用機)製品や,安定稼働するようにパッケージ化したソフトウエア製品が相次いで登場。その販売会社やAsteriskベースのIP電話システム構築を請け負うシステム・インテグレータが急増している()。業者の数は9月時点で30社を超えた。

 昨年末に日本にも製品が登場して話題になり始めたAsteriskだが,当初は製品開発元が販売やインテグレーションを兼ねることが多く,ほかにはオープンソースのAsteriskをベースにIP-PBXを構築するインテグレータがわずかにいる程度だった。

 このため,既にIP-PBXを世に送り出しているNEC,富士通といったメーカーは,Asteriskに対し,「気になる存在」としながらも,「我々の敵ではない」と冷静な構えを崩さずに来た。オープンソースが一般のユーザーには扱いづらいうえ,ユーザーをサポートする体制が整っていないこと,信頼に足る実績がないことなどがその理由だ(詳細は第5回)。

 ボタン電話装置メーカーであるナカヨ通信機の大戸一昌商品企画室課長は,「Asterisk製品は,秋葉原で売られるような手離れがよいものになると面白い存在になる。しかし,サポートは大変だろう」と言う。今年前半には先行事例が登場し始めたが,多くはソフト開発などを手掛ける企業。サポートはほとんど必要なかった。裾野が広がるとそうはいかない。この点がAsteriskの最大の課題と見られてきた。

 ところが,状況は一変しつつある。今年夏以降,さまざまな業者が相次いで参入してきた。その顔ぶれは,中小企業へのパイプと機動力を持つ地場の事務機器販売会社,全国に拠点を持つ運送業者(日本通運,写真)や電設業者(住友電設)などさまざまだ。準大手~大手インテグレータの中にも,Asteriskの評価を始める例,コール・センターに特化してAsteriskを採用する例などが出始めている。こうした業者がそろってきたことで,オープンソース・ソフトになじみのないユーザーにも,Asteriskはぐっと身近になる。

 Asteriskを取り巻くビジネスには,インターネット電話サービスを提供する事業者も顔をのぞかせる。例えばエニーユーザーやユーエフネット。両社は,インターネット電話サービスの一部として,AsteriskからIP電話に接続するためのゲートウエイ機能を提供し始めた。ユーザーからは,東西NTTの「ひかり電話」への接続ニーズが高い。しかし現状では,ひかり電話を含め,ほとんどのIP電話サービスはAsteriskを直接つなぐことはできない。そこで,ゲートウエイのニーズが出てくる。エニーユーザーとパートナ契約を結んでいるASPの浅田高春代表取締役は,「これで一通りのラインアップが揃った。ようやく本番だ」と意気込む。