◆今回の注目NEWS◆

◎夕張市、再建団体指定申請を市議会に提案(NIKKEI NET、9月21日)
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20060921AT3B2100C21092006.html

【ニュースの概要】夕張市が9月21日、国へ財政再建団体の指定を申請する議案を市議会に提案した。日本経済新聞は、9月29日には市議会で採決される見通しであると報道した。


◆このNEWSのツボ◆

 今年6月に、500億円超の債務を抱え破綻状態に陥っていたことが明らかになった北海道夕張市が9月21日、正式な国への財政再建団体申請議案をとりまとめた。9月29日には市議会で採決される見通しとのことである。

 ここで、いままでに報道された内容から夕張市の状況をまとめると、以下のようになる。

  • 予算(歳出)規模
  • 約110億円
  • うち税収
  • 約45億円
  • 第三セクターを含む債務総額
  • 約540億円

 自主収入の10倍以上の債務(市議会が制限していた夕張市の借入限度額は313億円)を抱えていたわけだ。ちなみに国の状況は、

  • 予算(歳出)規模
  • 約107兆円
  • 歳入規模(税以外も含む)
  • 約93兆円
  • 国債及び借入金残高
  • 約830兆円(特殊法人等は除く)

である。なんとなく、破綻に陥った夕張市と国の状況を見比べると大差ないような気もするが、余談はさておき、夕張市と大差ない財政状況の自治体は少なくない。これから、国主導・国管理の「自治体再建」の実証モデルが展開するわけで、他人事ではないと見守っておられる自治体の方も少なくないと思われる。

 ちなみに、これ以外にも最近のニュースを見ていると、粛々と自治体財政の健全化に対する枠組みが形成されていることが分かる。8月31日には、総務省が自治体の破産法制に関する研究会を発足させた。また、9月6日には、大阪府と埼玉県の地方債の発行条件に差がついた。

◎新しい地方財政再生制度研究会(総務省)
http://www.soumu.go.jp/menu_03/shingi_kenkyu/kenkyu/new_saiseiseido/
◎大阪に市場の目厳しく 地方債の発行条件に埼玉県と格差(9月6日、asahi.com)
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200609060044.html

 こうした一連の発表を見ていると、国(総務省)の基本的な考え方が「自助努力」であろうことがよく分かる。逆に、夕張市のように、破綻にまで至ってしまった場合には、相当厳しい再生策が要求されると考えられ、今後の動向から目が離せない。

    【2006年9月29日、編集部追記】9月29日に夕張市の再建団体指定申請案が市議会で可決された(「夕張市議会、再建団体申請を可決」〔NIKKEI NET〕)。来年以降、夕張市は国の管理下で財政再建を進めることになる。
安延氏写真

安延申(やすのべ・しん)

通商産業省(現 経済産業省)に勤務後、コンサルティング会社ヤス・クリエイトを興す。現在はウッドランド社長、スタンフォード日本センター理事など、政策支援から経営コンサルティング、IT戦略コンサルティングまで幅広い領域で活動する。