まずは,パソコンやルーターといったネットワーク機器に設定するIPアドレスやサブネット・マスクの意味を押さえることから始めるぞ。なぜ機器にこうしたアドレス情報を割り当てる必要があるのかを理解するのじゃ!

 最初の白帯編では,パソコンやルーターなどの身近なネットワーク機器にIPアドレスを割り当てる際に必要なスキルを身につける。機器に設定するアドレスの意味を理解するのが目標だ。

自分のパソコンのアドレスを確認

 パソコンやルーターといった機器をネットワークにつなぐとき,機器にIPアドレスやサブネット・マスク(ネット・マスクとも呼ばれる)などのアドレス情報を割り当てる。

 Windowsパソコンでは,TCP/IPのプロパティ画面*1でIPアドレスやサブネット・マスクといったアドレス情報を入力するし,ブロードバンド・ルーターにもアドレス設定画面がある(図1-1)。ここで正しいアドレスを割り当ててはじめて通信できるようになる。

図1-1●パソコンやルーターといった機器に設定するアドレス情報
図1-1●パソコンやルーターといった機器に設定するアドレス情報
機器をIPネットワークにつなぐ際には,IPアドレス,サブネット・マスク,デフォルト・ゲートウエイといったアドレス情報を割り当てる必要がある。
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 中には,パソコンにIPアドレスを割り当てた覚えがない人がいるかもしれない。こうした人は,パソコンのDHCP*2クライアント機能が動いているため,自動的にアドレスが割り当てられている。WindowsパソコンならTCP/IPのプロパティ画面で,「IPアドレスを自動的に取得する」という項目にチェックが付いているはず。そうすると,パソコンはネットワーク接続時にDHCPサーバーからアドレス情報を取得して割り当てる。

 そんなときはコマンド・プロンプト*3を起動して「ipconfig(アイピーコンフィグ)」とコマンドを実行してみよう(図1-2)。すると,自分のパソコンに割り当てられているアドレス情報が表示される。

図1-2●DHCPサーバーから自動的にアドレス情報を割り当ててもらっていてもipconfigコマンドで確認できる
図1-2●DHCPサーバーから自動的にアドレス情報を割り当ててもらっていてもipconfigコマンドで確認できる
ipconfigコマンドを実行すると,パソコンに割り当てられているアドレス情報が表示される。
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割り当てる基本情報は四つ

 パソコンに割り当てるアドレス情報は,いくつかある。それは,IPアドレス,サブネット・マスク,デフォルト・ゲートウエイ,DNS*4サーバー――の4項目である(図1-3)。いずれの項目も32ビットの値で,8ビットごとにピリオドで区切って10進数にした「xx.xx.xx.xx」のような数を入れる。

図1-3●機器に割り当てるアドレス情報の意味
図1-3●機器に割り当てるアドレス情報の意味
パソコンに設定したアドレスで,自分のIPアドレス,自分がつながっているLANのIPアドレスの範囲,ルーター(デフォルト・ゲートウエイ)のIPアドレスなどがわかる。
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 数字の羅列にしか見えないが,それぞれには重要な意味がある。どれか一つの値が間違っているだけでも通信できなくなってしまう。というわけで,これら四つの項目の意味を押さえるところから始めよう。

 IPアドレス項目に入れる値は,ネットワークで自分のパソコンをほかと区別するための情報である。IPネットワークにつながる機器1台1台に重複しない値を割り当てる必要がある*5

 デフォルト・ゲートウエイ項目には,ルーターのIPアドレスを入れる。ルーターは,自分がつながっているLAN(サブネット)とは別のネットワークへパケットを送るときに,パケットの中継を任せる機器だ。この項目に入れる数値を間違うと,LANの外側と通信できなくなってしまう。

 DNSサーバーの項目には,パソコンが通信相手のドメイン名に対応するIPアドレスを調べたりするときに,問い合わせパケットを送る先のDNSサーバーのIPアドレスを入れる。ここが違っていると,www.nikkeibp.co.jpといったドメイン名を使った通信ができなくなる。

隣のPCと同じ値にするのはどれ?

 以上の3項目と少し性格が異なるのがサブネット・マスクの項目である。xx.xx.xx.xxという32ビット長の数値で表記する点は変わらないが,この値自体で機器を特定するわけではない。IPアドレス項目なら自分自身,デフォルト・ゲートウエイ項目ならルーター,DNSサーバー項目ならDNSサーバーというように,ほかの項目は対象となる機器が実在するが,サブネット・マスクの値は機器を指定しない。

 サブネット・マスクは,パソコンに割り当てられたIPアドレスとセットにして利用し,そのパソコンがつながっているLANの範囲を決める。論理的な値なので実感しにくく,ここがIPアドレスを理解する最初のハードルになりやすい。ここでは,同じLANにつながっている機器には,すべて同じサブネット・マスクの値をセットしなければならないとだけ覚えておこう。サブネット・マスクについては,このあとでゆっくりと解説する。

 ここまでをまとめておこう。割り当ての原則は,「IPアドレスの項目はほかの機器と重複不可」で,「そのほかの項目は自分の隣のパソコン(同じLANにつながる)と同じにする」ことである。迷ったら,この原則に立ち戻って考えてみよう。