社内ネットワークへIPアドレスを割り当てるときは,IPアドレスを連続する「ブロック」として考えられるようにならなくてはいかん。そのブロックを実際のネット構成に合わせて当てはめていくのじゃ!

 茶帯編は,部署や組織にIPアドレスを割り当てる場面を想定する。その基本は,IPアドレスを特定の大きさのまとまり(ブロック)で考え,そのブロックを社内のサブネットに割り当てていく。この基本を押さえたうえで,社内ネットを管理しやすくするために,どう割り当てるとよいかというコツを身につける。

社内ネットの構成図を見てみよう

 はじめに,図2-1を見てほしい。これは,実際のインテグレータが作った社内ネットワークの設計図とアドレス割り当て表である。いずれも,ネットワークのどの部分に,どういったアドレスを配置するかを示している。

図2-1●社内ネットワークにどのようなIPアドレスを割り当てればいいかを考える
図2-1●社内ネットワークにどのようなIPアドレスを割り当てればいいかを考える
連続するIPアドレスをひとかたまりのブロックとして扱い,ブロック内のアドレス数を把握して,管理しやすいように割り当てる。
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 社内ネットワークを構築するときは,こうした設計図や設計表を作ることになる。またトラブル発生時には,この設計図を参考に,トラブル原因を探っていく。こうした図や表に書かれているアドレスの意味を押さえる必要があるわけだ。

また,社内ネットワークに存在する機器に具体的にどんなIPアドレスを割り当てるかを考えておくことも大切だ。これによって,管理のしやすさやトラブル・シューティングにかかる時間が大きく変わってくる。

プライベート・アドレスを使う

 そもそも,IPアドレスはインターネット上の機器を識別するための情報で,全世界で重複してはならない。このため,好き勝手にアドレスを割り当てることはできない*1。しかし,インターネットに直接つながないのであれば*2,自由に使えるIPアドレスがある。それがプライベート・アドレスだ。社内ネットワークには,このプライベート・アドレスを割り当てる。

 このプライベート・アドレスは,10.0.0.0~10.255.255.255,172.16.0.0~172.31.255.255,192.168.0.0~192.168.255.255――という3種類である(図2-2)。

図2-2●社内のコンピュータにはプライベート・アドレスを割り当てる
図2-2●社内のコンピュータにはプライベート・アドレスを割り当てる
ipconfigコマンドを実行すると,パソコンに割り当てられているアドレス情報が表示される。

 このほか,「リンクローカル・アドレス」というものも,インターネットとは直接つながっていないネットワークで自由に利用できる。その範囲は,169.254.0.0~169.254.255.255だ。ただ,このリンクローカル・アドレスを使うのはやめておこう。リンクローカル・アドレスは,パソコンが自分自身で独自にIPアドレスを割り当てる*3ときに使っているからである。

 例えば,DHCPサーバーからアドレス情報を取得して自身に割り当てるようになっているWindowsマシンは,DHCPサーバーがダウンしていたりすると独自にリンクローカル・アドレスを割り当てる。つまり,エラー発生時に割り当てることが多いリンクローカル・アドレスを正規に利用するのは避けた方がいいわけだ。

 したがって,社内ネットワークでは,3種類あるプライベート・アドレスのどれかを割り当てることになる。

クラスに応じてマスクが決まる

 では,3種類あるプライベート・アドレスのうち,どれを使うべきか。どれを使ってもかまわないが,種類ごとに使い勝手が違ってくる。

 というのは,三つのプライベート・アドレスそれぞれで,適用するサブネット・マスクのデフォルト値が異なるためである。

 32ビットのIPアドレスは,全体がA~Eの五つのクラス*4に分類されている。そして,それぞれのクラスごとに,適用するサブネット・マスクのデフォルト値が決められている。クラスAなら255.0.0.0,クラスBは255.255.0.0,クラスCは255.255.255.0である。このデフォルトのサブネット・マスクのことを「ナチュラル・マスク」と言う(デフォルト・マスクとも言う)。

 このナチュラル・マスクを3種類のプライベート・アドレスに当てはめると,10.0.0.0~10.255.255.255はクラスAで,ナチュラル・マスクは255.0.0.0になる。172.16.0.0~172.31.255.255はクラスBで,ナチュラル・マスクは255.255.0.0である。そして,192. 168.0.0~192.168.255.255はクラスCで,ナチュラル・マスクは255.255. 255.0である。

Windowsもクラスで判断

 実際は,このクラスに応じたナチュラル・マスクを採用しないこともできるが,それは例外だと考えておいた方がよい。社内ネットワークにアドレスを割り当てるということは,自分自身が機器に割り当てるだけでなく,ネットワーク技術に精通していないユーザーが割り当てることもあり得る。そうした場合は,できるだけわかりやすくて設定ミスをおかしにくいようにしておくべきだからである。

 例えば,WindowsパソコンにIPアドレスを割り当てるとき,設定画面でIPアドレスを入力すると,サブネット・マスクの値が自動的に入力される。これは,入力されたIPアドレスのクラスをWindowsが判断して,クラスに応じたナチュラル・マスクを自動的に入力するからだ。

 もし,ナチュラル・マスク以外を使っていたら,ユーザーがWindowsマシンにIPアドレスを割り当てたあと,Windowsが自動で入力したサブネット・マスクの値を書き換えなければならなくなる。そうすると,値を書き換えることを忘れたりする設定ミスが増える*5

 というわけで,プライベート・アドレスを使うときは,それぞれのナチュラル・マスクを使うべきなのである。