「スウィングしなけりゃ意味がない」というジャズの名曲をご存知ですか。ヒット映画『スウィング・ガールズ』でも流行ました。「世の中には2種類の人間がいる。スウィングする人と、しない人だ」。

 なぜこんなことを書くかというと、ITの進歩と楽しさ(スウィング)とは常に切っても切れない関係にあると思うからです。20年ほど前に米国のシリコンバレーでマイクロプロセサ中心の新たなITが勃興したとき、合言葉は「ジャスト・フォー・ファン」(楽しいからやる)でした。それ以降、東海岸中心だった伝統的な垂直統合型の情報システムが音を立てて崩れ去るのに、さほどの時間を要さなかったのは周知の事実です。

 その後、インターネットの台頭から現在のオープン・ソースやWeb2.0の急拡大に至るまで、ITの進展と活用を強力に推し進めてきたパワーは、経済原則や市場原理では説明できないものだったと言えるでしょう。それがIT産業の最も大きな特徴の1つです。

 インターネットが広まり始めたころ、多くの企業では「遊び道具」と思われていました。携帯電話が普及し始めたころに、誰がその業務利用をすぐに思いついたでしょうか。

 「楽しさ」に勝るパワーはありません。日本企業の情報システム部門は長年、不遇だったと言われます。ITに携わる人たちの多くも、自分たちの仕事にやりがいを持つ人は少ないと思われているようです。そういう話になったとき、すぐに聞こえてくるのは「企業がIT部門(IT担当役員)を軽んじているからだ」「経営トップがITを理解していないからだ」といった声です。

 確かに、それも事実でしょう。しかし、ITに携わる人が「楽しさ」を見つけられなければ状況は変わらないはずです。取材でお話をうかがう企業のIT担当者(メーカーもソフト会社もユーザー企業も)には、2種類のタイプがあるように感じます。嬉々として楽しそうに話してくださいる人と、そうではない人です。

 1人でも多くの人が前者になってもらえるような情報を発信するのが、我々の役目です。そして、そのためには我々自身が楽しくなるように努力しなければなりません。