Intel社のKevin Kahn氏
Intel社のKevin Kahn氏
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 米Intel Corp.は2006年9月25日,同社が米San Francisco市で開催する「Intel Developer FORUM(IDF)」 (2006年9月26日~28日)の記者向け事前説明会の場で,同社の研究開発態勢やその成果の一部を解説した。その中で説明に最も長い時間を割いたのが,9月18日に発表したばかりのハイブリッド型Siレーザー技術の詳細についてである(Tech-On!関連記事)。

「壁照明」で位置合わせ不要に

 今回Intel社は,ハイブリッド型Siレーザー素子について,(1)InP基板上に形成したAlGaInAsの発光層とSi導波路の張り合わせの際に位置合わせがまったく不要であること,(2)発光層からSi導波路へは「エバネッセント結合」と呼ぶ現象によって光が伝わること,(3)Intel社が考える「テラスケール・コンピューティング」のシステム向けに集積が容易であること,などの点を強調した。

 (1)の位置合わせが不要であるのは,この素子が発光層を「壁照明」のように利用するためである。このため,いくつか異なる発振波長を持つレーザーを1チップ上に集積する際でも,発光層やInP基板の組成や形状を変えずに利用する。ただし,実際には壁照明と異なり発光層全体が発光することはない。発光層とSi導波路を張り合わせた後に実装する電極のある箇所だけが発光する仕組みである。発光層とSi導波路の張り合わせには,「glass-glue」と呼ぶプラズマ状態の薄い酸化膜を利用する。この方法の採用によって,異なる格子定数を持つ結晶間での複雑な結晶成長技術を使わずに済んだとする。

 「従来の光インターコネクト技術は電気伝送よりもずっとずっと(much much much more)コストが高い。そのコストの大部分は実装時の位置合わせ問題にあった。今回の技術で,高い集積度と低コストを実現するメドができた」(同社Senior Fellow Director,Communication Technology Lab.のKevin Kahn氏)という。

 (2)のエバネッセント結合は,遠方へは伝播しないタイプの光を用いてエネルギーを受け渡す方法。これによってInPのバンドギャップよりむしろSi光導波路の設計によって発振波長が決まることになる。

 Intel社はこの技術を1チップで1TFLOPSの演算速度を実現するような超高速LSI搭載のボード間を接続するような用途に使う考え。データ転送速度は,例えば40Gビット/秒で変調した光信号を25の異なる波長で送受信することで1Tビット/秒が実現可能とする。「4~5年後をメドにこの技術の実用化を目指したい」(同社のKahn氏)という。