新しい切り口で分析

 2004年11月には現場の意向を反映した通称「新分析システム」が稼働を開始した。フロアマスターには1人1台ずつパソコンを与え、新分析システムにアクセスできるようにした。

 しかし、これらはシステム刷新によって乗り越えた最低限のハードルにすぎない。フロアマスターは、従来は不可能だった切り口での分析を次々に行えるようになった。フロアマスターが自ら作り、テナントとのコミュニケーションに使う報告書がいくつか生まれた。

 この1つが「カード会員レポート」だ。テナントごとに年齢別、新規・既存会員別での月単位での販売動向などを報告書にまとめたものだ。総売り上げの2割をカード会員が占めるルミネでは、再購買率が高い会員の動向を精査しておかなければならない。

 こうした動向を基にフロアマスターとテナント企業がコミュニケーションを取る際に、カード会員レポートを活用する。カード会員を購入頻度と購入金額の2つの軸で9分割してマーケティングを見直すといったことにも取り組んでいる。

 もう1つが「ショップカルテ」と呼ばれる報告書だ。カード会員に限らず、そのショップの実績を基にフロアマスターが具体的な指導や提案がしやすいような数字が並べられている。

 このショップカルテには坪(3.3m2)当たりの月間売上高などが示されている。カード会員レポートが顧客の動向を表したものならば、ショップカルテは各テナントの経営・収益の状態を示すものだ。

●7年連続の増収増益を記録

 新システムには、ほかにも「買い回り分析」や「マップ分析」といった機能を追加した。前者は、Aというテナントで買い物をした客がBという客で買い物をする確率を示す。このデータはテナントに開示するというよりフロアマスターが店舗のラインアップや配置を考える際に使う。客の動線を意識しつつ相性の良い店同士を同じフロアにするなどの工夫ができる。

 後者のマップ分析は、会員の住所を地図上に落としたものだ(右の図を参照)。顧客が職場や自宅に近い店舗で買い物をするのは自明の理だが、具体的な数値で把握することは難しかった。また職場の近くと自宅の近くでは買い物する曜日や時間帯、金額も異なってくる。

 沿線住民だから沿線で買い物をするとは限らない。詳細なデータが見えてくると電車内や駅構内の広告の効果も計りやすくなってくる。DM(ダイレクトメール)や新聞の折り込み広告を使った販促戦略の参考にもなる。

コミュニケーションの材料に

 新システムは、ルミネがテナントを育てるうえでも新しいテナントを誘致するうえでも武器になった。総合企画部の武田政昭マネージャーは「新分析システムで得られるデータですぐに退店を促すことはないが、判断する材料の1つになり得る」と語る。

 顧客の動向をつかめれば今ある店舗の改善にも役立つし、次にどのような店舗を誘致すれば良いかが見えてくる。新分析システムはルミネの新陳代謝をさらに活発なものにするかもしれない。

 新宿店営業部販売促進グループリーダーでルミネ1の中村美香3Fフロアマスターは「テナントとより踏み込んでコミュニケーションできるようになった」と語る。ルミネとテナントの二人三脚にはコミュニケーションの材料が欠かせない。新分析システムで得られる多角的な分析結果はその材料となっている。

 武田マネージャーも「あとはどのように使いこなしていくかが課題。DMの費用対効果も図れるようにならないか検討中だ」と新システムを使った今後の展望に意欲的だ。

●店舗のカード会員の分布を示す「マップ分析」機能

成長のカギはデータ活用

 カード会員が全売上高に占める比率は2001年度の14.8%から2005年度の23.8%へと大きく伸びている。今年4月に発表された中期経営計画「ルミネSPIRAL2008」にも社内データを積極的に活用する方針が挙げられている。ルミネカード会員の数は現在、約94万人。顧客動向を精緻(せいち)に把握するルミネの次の一手に注目が集まっている。

●ルミネの業務改善のポイント