2×2型MIMOに向けた小型のRFトランシーバ・モジュール。中央に見える黒い部分が2系統のトランシーバ回路を集積したSiチップである。
2×2型MIMOに向けた小型のRFトランシーバ・モジュール。中央に見える黒い部分が2系統のトランシーバ回路を集積したSiチップである。
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2×2型MIMOに向けた既存の通信モジュール(左)に比べて,大幅に小型になった(右)。既存の通信モジュールは,デジタル・ベースバンド回路も搭載しているため単純には比較できないが,RFトランシーバ回路だけを比較すると,約1/4程度に小型になった。
2×2型MIMOに向けた既存の通信モジュール(左)に比べて,大幅に小型になった(右)。既存の通信モジュールは,デジタル・ベースバンド回路も搭載しているため単純には比較できないが,RFトランシーバ回路だけを比較すると,約1/4程度に小型になった。
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2×2型のMIMOに向けて開発した,プリント基板に構成した小型のアンテナ(中央)。パッチ・アンテナ(右)を利用した場合と同等の感度を確保しながら,小型化につなげている。
2×2型のMIMOに向けて開発した,プリント基板に構成した小型のアンテナ(中央)。パッチ・アンテナ(右)を利用した場合と同等の感度を確保しながら,小型化につなげている。
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2個のアンテナの電磁的な分離度について,アンテナの種類ごとに評価した様子である。
2個のアンテナの電磁的な分離度について,アンテナの種類ごとに評価した様子である。
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展示内容を解説した資料から(図:Intel社)
展示内容を解説した資料から(図:Intel社)
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 米Intel Corp.は,無線通信の空間多重伝送技術「MIMO」に対応した小型のRFトランシーバ・モジュールを試作し,その概要を「Intel Developer Forum(IDF) Fall 2006」(2006年9月26日から米国カリフォルニア州サンフランシスコで開催)の前日に催した報道関係者/アナリスト向けの説明会で公開した。いわゆる2×2型のRFトランシーバ回路の大半を,90nmルールのCMOS技術で1チップに集積したことで小型化につなげた。既存の同等品と比べて,実装面積は1/4程度となっている。

 公開したRFトランシーバ・モジュールはIEEE802.11nに準拠し,5GHz帯の無線周波数を使って最大108Mビット/秒のデータ伝送が可能である。Siチップに集積した主な回路は,2系統の送信回路と受信回路,局部発振器(LO:local oscillator),I/Q変復調回路である。このSiチップを実装した基板には,低雑音増幅器(LNA)とパワー・アンプ(PA)がそれぞれ2個内蔵してあり,アンテナとデジタル・ベースバンド回路を外付けすれば無線機能を提供可能になるという。なおSiチップの面積は18mm2である。

 Intel社はRFトランシーバ・モジュールと一緒に,2×2型のMIMOトランシーバ回路に向けた小型アンテナも公開した。MIMO対応の無線回路は複数個のアンテナを用意する必要があるため,アンテナの小型化も必須になる。今回の場合,プリント基板に導体を張り付けて2個のアンテナを構成すれば小型にできることは分かっていたが,感度が低下する課題があった。プリント基板に構成した2個のアンテナ間を電磁的に分離することが難しいからである。Intel社は今回,プリント基板に張り付ける導体の形状に工夫を加えて電磁的な分離を確保し,面積が10cm2と小型ながら2個のパッチ・アンテナで構成したのと同等の感度を得られることを確かめたという。

 MIMO対応トランシーバ・モジュールとアンテナに関する今回の展示は,研究開発部門の成果発表を目的として2006年6月に開催したイベント「Intel Research Day」に次ぐ2度目。研究開発部門の成果であるため,現在のところ製品化に関する詳細は未公表とした。「いずれ事業部門へ移管することになる」(Intel社の展示説明員)。