図 「次世代ブロードバンド戦略2010」の目標
図 「次世代ブロードバンド戦略2010」の目標
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 次世代ブロードバンド戦略2010とは,総務省が2006年8月に公表した今後のブロードバンド回線の普及指針である。この次世代ブロードバンド戦略2010では,2010年度まで(~2011年3月)のブロードバンド回線の普及に対する数値目標と,それを実現するための方策をまとめた。2010年度までに全国を100%ブロードバンド化することを目標に掲げている。

 次世代ブロードバンド戦略2010は,ITベースの社会作りを提言した「u-Japan政策」などを受けて,今後のブロードバンド回線の普及指針を示したもの。u-Japan政策は,2005年を目標に策定された「e-Japan戦略」の後継である。

 e-Japan戦略でのブロードバンド回線の普及目標が達成されたことを受けて,次世代ブロードバンド戦略2010では新たな目標を二つ設定した(図)。第1の目標は,「超高速ブロードバンド回線」の世帯カバー率を2006年3月時点の80%から,2010年度までに90%に高めること。第2の目標は,ブロードバンド回線の世帯カバー率を,2006年3月時点の94%から,2010年度までに100%にすることである。なお,ここで言う世帯カバー率とは,回線がそばに来ていて,すぐに加入できる状況にある世帯の比率を指している。

 第1の目標にある超高速ブロードバンド回線とは総務省が定義したもので,伝送速度が上りと下りの両方ともに「30Mビット/秒級以上の回線」である。特徴的なのは,下りだけではなく,上りの伝送速度も高く設定したことだ。この速度は,22Mビット/秒程度のHDTV映像を一般家庭からも発信できることを念頭に置いて設定した。また,この数値を設定する際,総務省はブロードバンド先進国と言われてきた韓国を強く意識したという。韓国には,将来的に上り 32M,下り75Mビット/秒というブロードバンド回線が必要という議論があり,それに匹敵する数値を目標に定めた。

 第1の目標は,都市部を中心にして急速に普及しつつあるFTTHを考えれば,それほど高いハードルではないだろう。しかし,第2の目標であるブロードバンド回線の世帯カバー率100%については,難しい点がある。それは,過疎地域や離島など,ブロードバンド回線を敷設するのが難しい未整備地域が残されているからだ。

 e-Japan戦略でのブロードバンド化に対する基本方針は,民間の通信事業者が主体となり,国が利子助成などの投資インセンティブで側面支援するというものだった。次世代ブロードバンド戦略2010でも,その方針は踏襲する。さらに今回,総務省は未整備地域を持つ自治体の役割を重視し,自治体を中心にした対策を戦略に組み入れた。

 具体的な方策には,図の右側に示した(1)~(4)がある。先進的な自治体の事例を集め,そのノウハウをマニュアル化してほかの自治体のブロードバンド化に役立てるという作業が柱になっている。そのための委員会が自治体や通信事業者,機器ベンダーによって9月に作られた。2007年3月までにマニュアルを取りまとめる。