CiscoルータがカバーするIPアドレスの技術は,クラスレスアドレッシングだけではありません。今回はその中でも,主にWANで使用されているIPアンナンバードインタフェース,そしてLANで使用されているDHCPの2つに絞って説明します。

IPアンナンバードインタフェース

 ルータのインタフェースは基本的に,1つのサブネットに所属する必要があり,さらにそれぞれのインタフェースが別のサブネットに所属することになります。ルーティングの際にはルータのインタフェースのIPアドレスをネクストホップと指定することにより,ルーティングテーブルが作成されます。

 そのため,シリアルインタフェースのポイントツーポイント接続であっても,必ずインタフェースにはIPアドレスが必要になってしまいます。シリアルインタフェースのポイントツーポイント接続では,実際に使用するIPアドレスはルータと対向ルータの2つしか必要ありませんが,クラスレスアドレッシングを使用した場合は,255.255.255.252(/30)のマスクを使用したとしても4つのアドレスが,クラスフルアドレッシングの場合はサブネットの大きさが必要になってしまいます(図1)。

 図1 通常のアドレッシングとシリアルインタフェース
通常のアドレッシングとシリアルインタフェース

 このIPアドレスの無駄な使用を抑える技術として使用されるのが,IPアンナンバード(unnumbered)インタフェースです。IPアンナンバードインタフェースは,インタフェースにIPアドレスを設定せず,他のインタフェースのIPアドレスを「借用」して使用します。他のインタフェースのIPアドレスを借用したIPアンナンバードインタフェースは,ルーティングプロトコルなどの発信の場合は,借用したIPアドレスを送信元として使用します。IPアンナンバードインタフェースの設定は次のコマンドになります。

  • (config-if)# ip unnumbered [インタフェース名]
    • [インタフェース名]
      • IPアドレスを「借用」するルータの他のインタフェース名

 上記コマンドをIPアンナンバードインタフェースに設定したいインタフェースの設定モードで行います。例えば,次のような設定になります(図2)。

 図2 IPアンナンバードインタフェース
IPアンナンバードインタフェース

 IPアンナンバードインタフェースに設定できるインタフェースは,HDLC,PPP,LAPB,フレームリレーのいずれかにカプセル化されたシリアルインタフェースのみになります。イーサネットやループバックインタフェースはIPアンナンバードインタフェースに設定することはできません。また,IPアドレスを借用しているインタフェースがダウンすると,IPアンナンバードインタフェースもダウンします。そのため,借用元のインタフェースはループバックインタフェースが推奨されています。

 また,IPアンナンバードインタフェースはIPアドレスをもたないため,pingコマンドなどによる動作の確認などができないので注意が必要です。