ガートナー ジャパン 亦賀 忠明 氏 亦賀 忠明 氏

ガートナー ジャパン リサーチ部門
エンタープライズ・インフラストラクチャ担当
バイス・プレジデント

インフラ市場全般について、ベンダー戦略、ユーザーIT戦略などに関する様々な提言・アドバイスを行っている。

 サーバー市場では、このところ、新たなテクノロジーに関心が集まっている。仮想化、64ビットコンピューティング、ブレードサーバーといった話題は、さらにホットイシューになりつつある。数年前の話題が「低価格」一色であったことを思えば、この傾向の違いは明らかである。ではなぜ、こうしたテーマに関心が戻ってきたのであろうか。いろいろな理由が考えられる。しかし、ここで重要なことは、昨今のテクノロジーは単に「流行り」で関心を集めているのではないということである。

 最近では「コストの削減」も製品からシステム全体へとテーマが移りつつある。また「変化への対応」や「持続可能性」も企業にとって重要なテーマとなってきている。このような新しいテーマが、景況感の回復も手伝って真剣に議論されつつある。

 一方、こうした市場環境の変化をドライブするがごとく、2005年に入り、「新たなる成長」、「革新」といったキーワードが、IBMやオラクルをはじめとする外資系ベンダーのメッセージに目立つようになっている。このことは、市場自体が「維持・守り」から「拡大・攻め」に変わってきたことの表れであると考えられる。

 このようなメッセージは、ともすれば単なるコンセプト、スローガンといったことで一蹴されるケースもある。しかし、よく見ると、昨今のこうしたメッセージは、全くこの類のものではないことが分かる。

 ITを語る際、人間系のマネジメントに関する議論は重要である。併せてITの真価はテクノロジーである。こうした本質的な原点回帰がベンダーに見られるようになってきた。「テクノロジーは、単にテクノロジーのためのものではなく、ビジネスにとって意味のあるものでなくてはならない」、「テクノロジーでビジネス課題をどう解決すべきか」こうした共通認識が業界の中で起こりつつある。

 このような中、先進ベンダーは、テクノロジーに対するビジネス上の意味付け、すなわち「そのテクノロジーがビジネスに役に立つとなぜ言えるか」という問題に対する解の構築を加速しつつある。これは、まさしく「ソリューション」と同義である。ここで、これまでのソリューションとの大きな差異は、その統合の規模と論理的アーキテクチャの存在である。ハードウエアからビジネスアプリケーション、基盤アプリケーションといったすべてを統合し、連携・融合させ、最適化された論理アーキテクチャに基づき一体となって長期的にビジネスの基盤となるインフラストラクチャを構築すること。これがすべての先進ベンダーに共通に見られる戦略の方向性である。

 こうした戦略の方向性は、端的には「テクノロジーに関するビジネス合理性の追求」というように解釈できる。こうした動きは、まずはビジネス視点を持った革新的ユーザーに受け入れられる可能性がある。さらに、将来的にビジネス合理性が強く求められるようになったなら、それは、システムインテグレータや情報システム部門の業務のあり方を根本的に変える力となるであろう。

 システムを単に構築すればよいという時代は終わった。それぞれのテクノロジーを正しく理解することは重要であるが、こうした新たな動きへの備えもそろそろしておくべきであろう。