日経NETWORKという雑誌は,自社のネットワークを運用・管理する管理者をはじめとしたネットワーク技術者向けの記事を多く掲載しています。そうした読者層に向けた記事を企画するとき,編集部内で常に議論になるのが,「実際に企業でネットワークを運用・管理する人はどんな人なのだろう」という点。そうした疑問から,今回の調査では,勤務先や顧客先でネットワーク管理者がどのようにしてネットワークを管理・運用しているかという設問も設けました。

勤務先ネットの管理者の約半数が兼任

 まず紹介するのは,勤務先ネットの管理者に限定して聞いた問いに対する調査結果です。

 企業の中には,ネットワークやコンピュータ・システムの運用を業務とする「システム部」などの専門部署があるところと,そうした部署がないところがあるでしょう。さらに,専門部署があっても各職場でネットワークの“お守り”を任されているユーザーもいるはずです。そこで,勤務先ネットの管理者に限定して,システム部などの専門部署に所属して専任でネットワークを管理しているのか,それとも別の業務と兼任でネットワークも管理しているのかを聞きました。

 その結果,専門部署に所属して専任でネットワークを管理している管理者は49.5%,別の業務と兼任でネットワークを管理している管理者は47.4%でした(図1)。ほぼ半分ずつと言っていいでしょう。

図1●勤務先ネットの管理者の専任と兼任の比率
図1●勤務先ネットの管理者の専任と兼任の比率
勤務先ネットを管理・運用をしていると答えた人のうち,約半数が別の業務と兼任していることがわかった。

 今回の調査の回答者の属性を見てみると,過半数が従業員500人未満の中小規模の企業で働いている人でした。中小規模の企業ではシステム部がなかったり,システム部があっても最小限の人数に限定して現場の社員にネットワークの管理を兼務させる場合も多いといいます。データにはそういった偏りが反映されている可能性があります。ただし,それにしても兼任の勤務先ネットの管理者が意外と多いという印象を受けました。

兼任管理者の4分の1が1日1時間以上をネット管理に割いている

 本来の業務とは別にネットワークの運用・管理を兼任している管理者は,当然,本来の業務を中心に仕事をこなさなければなりません。しかし,ネットワークの運用・管理も大変な業務です。兼任の管理者にとっては,本来の業務とネットワーク管理業務のバランスの取り方が難しいのではないでしょうか。

 そこで,兼任のネットワーク管理者が,1日にどのくらいの時間をネットワークの管理・運用に当てているのかを聞いてみました。

 その結果を見ると,「1日30分未満」と答えた回答者が約6割を占めました(図2)。別の業務と兼任ということもあり,ネットワークの管理・運用は効率よく,あまり時間をかけずに済ませているのかもしれません。もしくは,別に専任のネットワーク管理者やネットワーク管理を委託している保守ベンダーなどがいて,補佐的にネットワーク管理をしているだけというケースも考えられます。

図2●兼任の勤務先ネットの管理者が管理・運用業務に割いている時間
図2●兼任の勤務先ネットの管理者が管理・運用業務に割いている時間
ネットワークの管理・運用業務を他の業務と兼任している人に聞いた。1日当たり30分未満と答える人が6割を占める一方,1日に1時間以上の時間を割いている人も約4分の1に及ぶ。
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 「1日30分未満」という回答者が多い半面で,1日に1時間以上をネットワークの管理・運用に当てている回答者も約4分の1いました。中小企業や学校,地方自治体などでは,従業員数が少なく,ネットワークの規模も小さいために,専門のネットワーク管理者を一切置いていないところもあります。そういうところでは,ネットワークやコンピュータに比較的詳しい従業員が本来の業務の空き時間を利用して,ネットワークからサーバー,クライアント・パソコンまで管理・運用していたりします。別の担当業務を抱えながら,兼任でネットワークの管理・運用も担当するのは大変です。特に,1日1時間以上,ネットワークの管理・運用にかかるのでは大変な苦労でしょう。

 日ごろ日経NETWORK編集部あてに届く読者の意見にも,ほかの業務と兼任で勤務先のネットワークを管理しているという立場の方からのものが結構あります。中には,「最近はあらゆる業務やシステムにネットワークが絡んでくるのでトラブルが増えた」,「どこまで自分で管理し,どこからベンダーや保守会社に任せるか悩む」,「本来の業務とネットワークの管理・運用に割く時間のバランスが難しい」といった意見があります。

 兼任の管理者にとって,「ネットワークの管理・運用にかける時間をいかに短縮したらいいのか」という問題は,共通の悩みと言えそうです。