どんなネットワーク・トラブルでも解決への道のりに大きな差はありません。まず,トラブルの発生個所を切り分けるところから始まり,原因を突き止めていきます。では,トラブル個所を切り分けて原因を突き止めるには,どんなことをすればいいのでしょうか。

ネット・コマンドと機器の目視が有効

 回答者にトラブルの原因を特定するのに役立った行動を複数回答で聞いたところ,「pingなどのコマンドを利用した」という回答がもっとも多く,44.6%でした(図1)。読者のみなさんの中にも,「トラブルが起こったら,とりあえずpingを打つ」という人は多いと思います。実際,今回の調査でも同様のコメントがたくさんありました。pingのほかに,「ipconfig」や「netstat」といったコマンドもよく使われているようです。コマンドを使ってネットワーク機器が応答するかどうかを試したり,ネットワークの状況を調べてみるというのは,トラブルの対処法として定石です。実際にこれだけであっさり特定できるトラブルも多々あります。

図1●トラブルの原因を特定するのに役立った行動(複数回答)
図1●トラブルの原因を特定するのに役立った行動(複数回答)
「pingなどのコマンドを利用した」が半分弱,「機器やケーブルの様子を目視で調べた」が3割を占めた。
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 では,コマンド以外ではどんなことがトラブル特定に役立つのでしょうか。ここでは,2位の「ネットワーク機器やケーブル,現場の様子を目視で調べた」(31.7%)と,5位の「ネットワーク機器のLEDランプを確認した」(20.8%)に注目です。これらを見ると,実はネットワーク機器やケーブルそのものをよく見てみることが大切だとわかります。トラブルが起こると,まずパソコンやネットワーク機器の設定画面を開いて設定を確認したり,変更したりする人が多いでしょう。それももちろん大切です。でも,とりあえず落ち着いて,ネットワーク機器やパソコンの状態をよく見てみるということが実は有効のようです。単純な作業と侮るなかれ。何事もまずは“現場検証”ということです。

家庭内ネットのユーザーは事業者などに問い合わせる

 ただし,トラブルを特定するために取る行動はネットワークにかかわっている立場によっても違うようです。ユーザーかネットワーク管理者か,かかわっているのが家庭内ネットワークか勤務先や顧客先のネットワークかで,できることは違います。ネットワークに関する知識も違うでしょう。

 そこで,回答者のそれぞれの立場――家庭内ネットのユーザー,勤務先ネットのユーザー,勤務先ネットの管理者,顧客先ネットの管理者――ごとに,役に立ったことベスト7を挙げてみました(図2)。1位はどの立場でも「pingなどのコマンドを利用した」です。これは特に驚くことではありません。ですが,2位以下の項目の順位は少しずつ違います。

図2●立場別に見た「トラブルを特定するのに役立った行動」(複数回答)
図2●立場別に見た「トラブルを特定するのに役立った行動」(複数回答)
それぞれの立場の上位7項目を挙げた。色分けした項目は図1の上位7項目を示している。
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 家庭内ネットのユーザーは,「通信事業者に問い合わせた」が25.4%で3位に,「通信事業者やベンダーのWebサイトをチェックした」が15.9%で7位に入っています。これはかなり特徴的。「通信事業者に問い合わせた」は勤務先ネットのユーザーでは7位に入っていますが,勤務先ネットや顧客先ネットの管理者ではランク外ですし,「通信事業者やベンダーのWebサイトをチェックした」はほかの立場の回答者ではランクにまったく入っていません。また,ほかの三つの立場では2位に入っている「ネットワーク機器やケーブル,現場の様子を目視で調べた」も5位と低めです。

 家庭内ネットのユーザーの場合,トラブルに遭うとパソコンやネットワーク機器の設定をとりあえず確認し,それでわからなければ,通信事業者やベンダーのカスタマー・サポートに聞いてみるというのが行動パターンのようです。どこの事業者もユーザー向けのサポート・サービスは充実させていますから,自分であちこち確認するよりも聞いた方が早いということがあるかもしれません。通信事業者やベンダーのWebサイトをチェックするのは,これらのWebサイトには「Q&A」やトラブル・シューティングのページがあったりするからでしょう。

 一方,勤務先ネットのユーザーでは「ネットワークに詳しい知り合いに相談した」が4位に入っているのが面白いところです。オフィスでは周りにネットワークに詳しい同僚や上司,部下がいるケースが多いのでしょう。自分でわからなければ,とりあえず周りに「ちょっと変なんだけど」と声をかけてみるというのは会社などではよくある光景といえます。

顧客先ネットの管理者はログを活用

 一方,勤務先ネットの管理者や顧客先ネットの管理者は自分がトラブルを特定,解決しなければならない立場です。ユーザーとは違って,誰かに気軽に聞けるわけではありません。これらの人たちの回答のランキングを見ていると,それがよくわかります。自らネットワーク機器の動作状況や設定を確認してみたり,ケーブルを抜き挿ししたりして手探りでトラブルを突き止めていく姿が目に浮かびます。

 自分で試行錯誤するという点では顧客先ネットの管理者と勤務先ネットの管理者は同じですが,両者で特に差が出た項目がありました。それは,「ネットワーク機器のログを調べた」という項目です。顧客先ネットの管理者では「ネットワーク機器のログを調べた」は37.0%で3位。勤務先ネットの管理者の15.8%に比べると,回答率は2倍以上です。

 顧客先のネットワーク管理を請け負う保守ベンダーなどでは,ログ解析ツールなどを使って,顧客先の社内ネットワークを常に監視するサービスを提供しているところがたくさんあります。また,最近のオフィスでは入退室の管理も厳しくなっていて,簡単には立ち入りできません。顧客先ネットの管理者は勤務先ネットの管理者と違って社員ではないので,オフィスを自由に動き回れない場合が多くあります。実際にオフィス内にあるネットワーク機器を見て回ったり,ケーブルを抜き挿ししたりするのは難しいことがあるでしょう。そういったことから,顧客先ネットの管理者にとってはログを調べるのが意外に手軽な方法なのかもしれません。