長谷 和幸(ながたに かずゆき)
アイテック情報技術教育研究所 主席研究員

 今回取り上げるのは,ネットワークの基礎と言える「IPアドレス」に関する問題である。2005年に出題された午後!)問題の問4の一部を抜粋した。

今日の問題
(平成17年度のテクニカルエンジニア(ネットワーク)試験午後I問題の問4から抜粋)

問 ネットワーク間の接続に関する次の記述を読んで,設問1~2に答えよ。

 A社とB社は,C県内で通信サービスを提供する通信事業者であり,A社はインターネット接続サービス用ネットワークISP-Aを,B社はISP-Bを運用している。ISP-1~ISP-3は全国規模のインターネット接続サービス用ネットワークであり,ISP-AはISP-1と接続し,ISP-BはISP-2と接続している。また,ISP-1とISP-2は,ともにISP-3と接続している。

 このたび,A社とB社のISP事業の統合が決まり,ISP-AとISP-Bを接続して運用することになった。ISP-AとISP-Bを接続した後は,経費削減のために,ISP-BとISP-2間の接続を廃止する。ただし,接続作業のための移行期間を設け,移行期間中は,ISP-BとISP-2を今までどおり接続しておく予定である。図に,移行期間中のネットワークの構成を示す。

〔ISP間の接続〕

 ISP-AとISP-Bの接続のために,通信事業者から光ファイバを8本借用し,A社ビルとB社ビル間に光伝送路を開通させる。L2-SW間は,四つのGEポートで接続し,合計4Gビット/秒の通信容量を確保したい。そのため,当該GEポートをグループ化して,負荷分散の機能を有効にする設定を行う。負荷分散は,送信フレーム内の二つのフィールドをキーにして,キーの異なるフレームを異なるGEポートから送信させる機能である。L2-SW間の通信容量を,できるだけ4Gビット/秒に近付けるためには,グループ化された各GEポートから均等にフレームが送信されるように,キーにするフィールドを選択する必要がある。L2-SWのデフォルトのキー設定では,送信元MACアドレスとあて先MACアドレスのフィールドがキーに選択されるが,ここでは,送信元IPアドレスとあて先IPアドレスがキーに選択されるように設定して,負荷分散がより適切に行われるようにする。

〔ISP間の経路制御〕

 ISP-AとISP-Bの割当てを受けているアドレス空間は,プレフィックス長で表すと,それぞれ17ビットと18ビットである。これらのアドレス空間には,アドレスクラスがクラスで,連続する複数個のネットワークアドレスが使用されている。

 ISP-AとISP-Bは,経路制御プロトコルにRIPv2を使用しており,ISP-AとISP-Bの接続においてもRIPv2を使用することにした。RIPv2はRIPv1の拡張版で,経路選択のメトリックに,あて先ネットワークに到達するまでに通過するルータの数であるを使用することや,ルータ間で,各ルータの保持する経路情報を,デフォルトで秒ごとに送信することは共通である。

 RIPv2には経路集約の機能があり,経路集約するプレフィックス長はルータで設定できる。仮に,ルータAとルータBの経路制御において,24ビットのプレフィックス長で経路集約を行うように設定すると,ルータAとルータBから対向のルータに送信される経路情報のエントリ数の合計は,になる。また,経路集約するプレフィックス長を,ルータAでは17ビットに,ルータBでは18ビットに設定すると,それぞれのルータから対向のルータに送信される経路情報のエントリ数は1になる。

設問1
 本文中のに入れる適切な字句を答えよ。

設問2
 〔ISP間の経路制御〕について,(1),(2)に答えよ。

 (1)本文中のに入れる適切な数値を答えよ。

 (2)通信経路数が増加したときに,経路集約を行わないことによる問題点を二つ挙げ,それぞれ20字以内で述べよ。

この問題を別ウインドウで表示