電話番号を変えずに契約先の携帯電話事業者を変更できる「番号ポータビリティ」(MNP)が,いよいよ10月24日に始まる。この開始日をNTTドコモ,KDDI,ボーダフォン(10月からソフトバンクモバイル)の3社が公開したのは8月9日のこと。これを受け真っ先に手数料を発表したKDDIを皮切りに,8月末までに3社の手数料が出そろった。

 発表内容を見ると,転入/転出手数料は3社横並びである()。ある携帯事業者から別の携帯電話事業者に変更する場合,新しい事業者に収める転入手数料は無料だが,従来の事業者に支払う転出手数料は2100円となる。ただし,新しい事業者に転入する際には通常の新規契約同様,契約事務手数料が別途かかる。この金額はKDDIとソフトバンクモバイルが同額の2835円で,NTTドコモの3150円よりも安価である。

表●携帯電話事業者3社のMNP関連料金とキャンペーン概要
表●携帯電話事業者3社のMNP関連料金とキャンペーン概要
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 これに先立つ5月17日には,NTTドコモ,KDDI,ボーダフォンの3社が,番号ポータビリティ・サービスを利用する際の具体的な手続き内容を明らかにした。携帯電話事業者を変更する際の手続きを,従来よりも簡略化した点が最大のポイントだ()。

図●携帯電話の番号ポータビリティ(MNP)を利用してA社からB社に切り替える際の手続き
図●携帯電話の番号ポータビリティ(MNP)を利用してA社からB社に切り替える際の手続きNTTドコモとKDDI,ボーダフォンが5月17日に公開した。窓口における手続きは最大で数時間程度になる見込み。
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 従来は携帯電話事業者を変更する場合,ユーザーが解約手続きとの新規契約手続きを各事業者に対して個別に行う必要があった。番号ポータビリティの場合は移転元の携帯電話事業者に対しては,電話やWebサイトで番号ポータビリティの利用を申し込むだけで済む。ユーザーは新規契約する事業者の窓口/販売店に出向くだけでよい。

 MNPの手続きを簡略化する上で最も重要なのは,各事業者の顧客管理システムを密接に連携させること。3社は2006年春までに,システム間接続のための共通スペックを策定した。ただしMNPの詳細がすべて確定しても,ユーザーが積極的に利用できるまでにはハードルが残る。

 例えば,端末に保存しているアドレス帳などの内部データを完全には引き継げない点。各事業者でフォーマットが異なるだけでなく,端末メーカーによっても差がある。同一事業者間ならまだしも,番号ポータビリティでは移転元と移行先の端末の組み合わせが無数に広がってしまうため,確実にデータを移行できる保証はない。携帯電話事業者はこの問題に対して,番号ポータビリティのサービス基盤とは別に,独自の手法をとる。

 KDDIは他社端末のデータをau端末に移行するためのシステムを完成させる前から,他社端末からのデータ移行システムを運用していたが,「新システムではデータ移行にかかる時間を短縮する」(KDDI)ことで,番号変更に対するユーザーの心理的な壁を取り除く。このシステムは直営店の受付窓口に限らず,複数事業者の端末を販売している代理店に対しても導入を進める方針だ。