今回は,複数のネットワーク回線を利用して拠点間が結ばれているケースを例に,合成稼働率の求め方を見てみましょう。
稼働率の合成の基本
下図で示している各通信路の稼働率は,説明のために微妙に変えてありますので注意してください。また回線以外の部分は故障しないものとします。
図1●直列の稼働率の合成(経路は1個) |
拠点Xと拠点Yの間の経路が1個のケースでは,拠点間は直列に接続されていると考えることができます。この場合の拠点間の稼働率は各回線の稼働率の掛け算で求めます。図の例を計算すると,
0.9×0.8×0.7=0.504
となります。
一方,拠点Xと拠点Yの間に複数の経路があるケース(下図では3通り)では,拠点間が並列に接続されていると考えることができます。この場合は,1から各回線の稼働率を引いたもの同士を掛け合わせて,その値を1から引いたものが,拠点間の稼働率になります。
文章で書くとややこしいので式にしてみましょう。すると,
1-(1-0.9)×(1-0.8)×(1-0.7)
=0.994
となります。
図2●並列の稼働率の合成(経路が複数) |
結果を見比べると,直列の場合は1回線の稼働率よりも全体の稼働率が低くなっています。一方,並列の場合は1回線の稼働率よりも高めに値が出ています。どれか1回線が切れるとつながらなくなる直列接続のケースと,1回線が切れても残りでサービスが継続できる並列接続の特徴が現れています。
3回線のうち2回線が必須だと
ところでネットワークでは,ただつながればいいというケースだけではありません。安定した稼働を考えたとき,帯域を保証する必要があったりします。
前述の並列接続の例で,各回線の帯域が100Mビット/秒だったとします。このとき,すべての通信路を同時に使用すると,最大300Mビット/秒まで対応できます。
ここで故障発生時でも200Mビット/秒は保証しなければならないときの稼働率を考えてみましょう。つまり,3回線あるうちの2回線が稼働していないといけないということです。
並列接続の稼働率の構成は一番下の表のようになっています。今回のケースは3回線あるうちの2回線以上が稼働していればいいので,星印のところを合計します。すると0.902と求めることができます。ただつながっていればよい(1回線だけ稼働していればよい)ケースよりも稼働率が低くなっています。
図3●並列の稼働率の構成 |
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